「思い出は降る雪のごとく遠く切なく・・・」 1 |
- 01: 名前:無名作家投稿日:2016/10/04(火) 23:44
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一 馴れ初め
今思えば私と福田久との関係は単なる女中と主家の息子という関係ではなく、ありていに言ってしまえば要するに「夫婦」の関係だったと言っても良かった。
まだ小学6年の十二歳の子供と三十七歳になる女が夫婦と言うのは全く常識を外れた事だが、やはりあれは夫婦としか表現しようの無い関係だった。
無論、表向きは私は主家の大切に育てられた嫡男で、福田久は単なる使用人の女中にすぎなかったし、当時の私にとって久と「夫婦」だと言う意識は露ほども無かった。
私は中学受験を控えた小学6年に上がると、母から昔ならもう元服の年なのだから、一人で寝起きするように言われ、母屋から離れた奥のこじんまりした離れ屋敷で一人で生活するように命じられた。それに、中学受験のために静かな離れ屋敷での生活が必要なのだとも言わた。それまでは大勢の家人や住み込みの下女や女工の暮らす騒然とした母屋の中で落ち着いて勉強が出来なかったのは確かだった。
昔からの広い藩士の屋敷の中に母屋や機工場などが立ち並び、その中にこじんまりした離れ屋敷が有った。以前は年老いた祖母が生活していたが今は空き家になっている小さな一軒家
<省略されました> [全文を見る]
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