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  弱みを握られた美女

01: 名前:無名作家投稿日:2015/05/18(月) 04:40
父の親友である正和オジサンは、俺が通っているテニスクラブの理事長をしている。

三度の飯より将棋が好きだというオジサンは暇さえあれば我が家に指しに来ていた。

聞いたところによると将棋同好会時代から、オジサンが唯一勝てるのが、父だったのだそうだ。

大抵は父と二人でパチッパチッとプロも顔負けするくらい良い音を響かせているのだが、時々、俺も相手をさせられることがあった。


「ねえ、オジサン!新しいコーチって未亡人って聞いたけど、旦那さんとは離婚したの?旦那さんって、どんな人だったの?」

「そんな個人情報をぺらぺら教えられるわけないだろ」

「オジサン、さっきの”待った”で何回目だったっけ?」

「なに、今日はずいぶん気前が良いと思ったら、そういうことだったのか?」

「あはは。ケイが他人に興味を持つなんて珍しいなw正和、そのコーチって美人か?」

「重田ゆずり選手だよ」

「え?あの?そりゃあ、とんでもない美人だわw」

「てか、大丈夫なの?そんな人を雇って?」

「そ、そんな人?お父さん、それ、どういう意味?」

「い、いや、それは・・・」


あのコーチの旦那が、少女に悪戯したって?


我が耳を疑った。


「女子小学生を公園の隅に連れ込んで、胸や脚を触ったって話だ」「重田信明・・・有名な選手だったんだぞ。

日本が誇る世界ランカーだったんだ」


「それが、

 まだプロに成り立てだった、ゆずりさんと

 突然、結婚した時は、みんな驚いたものだ」


「だが、もっと驚いたのが、

 女子小学生への痴漢容疑だ、日本中が騒然となった」「たしか、ウインブルドンへ行く壮行試合の後だったよな」


「そうだ。サインをねだる女子小学生をテニスの森の公園に連れ込んだんだ」


「ほ、本当のことなの?その人も罪を認めたの?」


「いや、本人は認めなかった。

 俺だって信じなかったよ。ノブがそんなことするわけねぇ!」


『痣があった。少女の腕に青あざがあったんだ。

 良く見ると脚にもあった。それで服を脱がしたんだ!』「最後まで、そう弁明していた」「最後って?」


「世間が許さなかったんだよ」


「小学生に悪戯って言えば、キングオブ性犯罪だ」


「ウインブルドンも、輝かしい功績も、未来さえも何もかも失って、


 走ってきたトラックに飛び込んで、、、終わりだ」


「ゆずりさんのお腹には赤ちゃんがいたのにな」


「大きなお腹を抱えて、実家に勘当されて、、、それでも毅然としてたな」「夫を信じて、本当によく闘っていた」「なのに・・・本当に可哀想だったよ」「そ、そんな・・・」


「当時はまだオヤジが理事長で、


 俺は名前だけの常務理事だったが、ノブはうちのクラブの誇りだった」「合コンでもよく自慢してたもんなw」「まあなw その恩返しって訳じゃないが」「ゆずりさんがこの街に戻ってきていると聞いてね、


 様子を見に行ったんだ


 そうしたら、スーパーのパートで苦労してるのを見かけてな。


 知らんぷりもできないだろ。


 家計の足しにでもなればと、コーチの話を持ち掛けた」
「問題になったりしないのか?かなりのスキャンダルだろ?」
「14年も前の話だぞ、誰も覚えてやしないよ。


 それに俺はノブの無実を信じている」
「そうだよ!オジサン!まったくその通りだよ!


 仮に有罪だったとしたって奥さんには何の罪もないだろ!」
思わず力が入った。

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”冴えない奴”だな


健太が転校してきた日、最初の感想がそれだった。案の定、クラスでも最下層グループの一員に落ち着き、


その中でさえも浮いていたところを底意地の悪い米山に目をつけられて、、、


きっかけは微妙なイントネーションだった。


本人はなんとか標準語で話してはいるつもりだったのだろうが


東北訛りが抜け切れていなかった。最初は発音を笑われ、そのうち真似されるようになり、


そして、健太は、ほとんどしゃべらなくなった。


あとはお決まりのような虐めの始まりだ。

そんな健太と親しくなるのは、非常に簡単なことだった。「なあ、ゲーセン行かない?」「え?、え?」挙動不審にキョロキョロした後で、健太は自分の顔を指さして


目を大きく見開いた。ゲーセン、カラオケ、ボウリング。あえて他の奴らとは距離を置いて、健太とだけ、二人だけで遊ぶようにした。


狙いは、健太に、俺の1番の友が健太であると思わせること。

また、他の奴が健太と親しくなることを防止することだ。当然のことだが、俺と一緒に居るようになった健太を虐めるやつなど誰もいやしない。健太を一番虐めていた米山は


父親が俺のオヤジが経営する会社の役員だということもあり、


子供の頃から一緒に育った兄弟のような間柄だ。


俺のやることにケチを付けることなどあり得ない。半月も経つと

健太は、ウザイくらい俺の傍にいるようになった。


毎日毎日


健太とつまらない会話をした。


しかし、目的のことを思うとそれも苦痛ではなかった。「なあ、健太、遅くなってきたし、うちで飯を食っていけよ」


「え?でも・・悪いから」


「悪くないよ、友達だろ」


「う、うん!」
ちょうど2回程


健太をうちに連れてきて、飯を食った後だった。


テニスクラブの後で、コーチから声を掛けられた。


「田島君、いつもありがとう。


 健太がお宅でご馳走になったみたいで」


ドキッとした。


とても美しい笑顔だ。「あれ?田島君?どうしちゃった?」ぼうっと見惚れていると、コーチは顔を近づけてきた。や、やめろー

俺は真っ赤になった顔を悟られないように即座に逃げ出した。ふ、ふざけろ!


なんなんだ、この様は!
あまりの無様さに


自宅に帰ってからも、いいかげん自己嫌悪が続いた。そんな時今時珍しく家電に電話がかかってきた。
コーチからだった。

「田島君ちみたいに、豪勢にはいかないけど、

 一生懸命作るから、明日食べにきて!

 お母さんのご了解は貰ってあるから!」


これが、初めてガッツポーズをした瞬間だった。


俺はすぐにパソコンの画面に向って、

計画一覧表の一番上にある項目、手料理の欄に”済”という文字を入れた。次の項目は・・・


ゆずり
そう、お前を名前で呼ぶことだ。一度、手料理をご馳走になると


それが、まるで自然の流れであるかのように、


俺は健太の家で度々夕食をご馳走になるようになった。「なあ、健太、やっぱさ、お前の家で、コーチって呼ぶのは変だよな?」「うん、変だよ」「なんて呼べばいいんだろ?」


「名字の重田だと僕と同じだから、紛らわしいし、やっぱ名前じゃない」「じゃあさ、コーチの前で言って貰えないかな?」
その日の夕食中


俺は健太の足を軽く蹴った。これが合図だったからだ。「ねえ、お母さん!

 お母さんのこと田島がいつまでもコーチって呼んでるの変じゃない?」


おい!どんだけ棒だよ!


「え?そうねぇ。確かにテニスクラブじゃないんだから変よね」「名字だと、僕と同じで紛らわしいから、やっぱ名前だよね?」


「そうね、田島君!私の名前知ってる?ゆずりって言うの」コーチの名前が「ゆずり」ということなんて、、、


もちろん知っていたさ。


俺はいつも自室で「ゆずり、ゆずり」と叫びながら、身もだえているのだから。この日から、俺はコーチをゆずりさんと呼ぶようになった。


元々抜群に人気が高いゆずりさんだ。


俺が”ゆずりさん”と呼ぶようになると、

テニスクラブの生徒たちも皆、”ゆずりさん”と


親しみを込めて呼ぶようになった。

そのこと自体は想定内であり、問題はなかった。ただ一つを除いて・・・
皆にワイワイ♪囲まれている ゆずりさんを邪な目で見つめる顔があった。


その顔には、嫉妬からくる下卑た笑みが浮かんでいた。清水コーチは、


20代の独身男で、ゆずりさんが来る前の俺達のコーチだ。


テニスクラブでは主に奥様連中を相手にしているせいか、


言葉つきも妙に甘ったるく嫌らしい。


何処にでもいる頭の軽そうなスポーツマンだが、


プライドの高さだけは一流だった。女子を露骨な視線で見ているという悪評から、


俺達の担当を外された彼にとって、


後釜であるゆずりさんが、


生徒たちから慕われているのは、プライドが許さいのだろう。


ちなみに

清水の悪評をクラブ中に広めたのは、この俺なのだが(笑)


たが、けっして事実無根というわけではない。


事実、レッスン時に嫌らしい手つきで触られたという女子も少なくはなかった。その清水が、ゆずりさんの美貌に目を付けない訳がない。全ては想定した通りだった。ただ、それ程まで早く清水が動くとは思わなかった。見張らせていた庄司から、


清水がゆずりさんを連れて、ラウンジを出て行ったと聞くと俺は一目散に走った。


当然、場所にも見当がついていた。「俺と付き合わないか?」と清水に突然求められて


ゆずりさんは困惑の表情を浮かべていた。


無理もない。彼女にとっては青天の霹靂のはずだ。


「はい?」


「だから、付き合おうって言ってんの」


清水の奴、興奮で息を切らしているようだ。「どうやら、本気で言っているようですね」


ゆずりさんの声音を聞いて、はっとなった。


清水の勢いに威圧されているのではないかと

若干不安だったが

杞憂だったようだ。


ゆずりさんは、はっきりと言った。


「申し訳ありませんが、お断りします」


この返事を聞いて


それまで自信満々に唇に笑みを浮かべていた清水が


急に血が沸き立つかのように目を剥いた。


「元プロか何か知らんが、お高く止まりやがって!

 知ってんだぞ、俺は!

 お前の死んだ旦那、痴漢なんだろ?卑劣な性犯罪者じゃないか!」ゆずりさんはキッと見つめ返した。


「何の証拠があって私の夫を侮辱するのでしょうか?」


「職場で女を口説く貴方ではあるまいし、下種な勘繰りは止めてください。
 話がそれだけでしたら、、失礼します」


全く動揺する素振りも見せずに言い放つ。毅然としていた。

夫は無実だ、何も恥ることはない!

ピンと伸びた姿勢の良い背中が、そう語っているようだった。


その背中に、いきなり手が伸びてきた。

清水は、腕ずくでゆずりさんを抱き寄せようと肩を掴むと、

そのまま逆上に瞳を輝かせた顔を寄せていった。


「なにをするの!」


ゆずりさんは、夢中で清水を振り払う。


しかし


「バラすぞ!クラブ中にばらしてやるよ!お前の破廉恥夫のことを」このセリフで、抵抗していた ゆずりさんの動きが、ピタリと止まった。
ほくそ笑む清水の下卑た面が、遠目にも良く分かった。

「なんだよw なんだかんだ言って、バラされるの嫌なんじゃないかw
 黙っててやるよ。その代り、素っ裸になって詫びて貰おうか。
 そうだなぁ、土下座が見たいなぁ、形の良い土下座、、見せてよw」

なにぃっ!あの野郎!調子に乗りやがって!

「どうした?なんとか言えよ!
 変態を夫にした自分の見る目の無さを全裸を晒して悔やむんだな。
 最初から俺みたいな男にしとけば・・・ 」


ビッシャンッ!!
骨まで響くような乾いた音が俺のところまで聞こえてきた。

「痛っ」

ゆずりさんは、凛とした美貌を引き締めながら、
刺さるような視線で清水をじっと見据えていた。

「下劣な男、吐き気がするわ」

清水は何も言い返さずに、驚愕の表情で口をパクパクさせている。
明らかに、たじろいでいた。

あの射抜くような大きな瞳は、俺も味わったことがある。

「一応、貴方も同僚なので、もう一度だけ警告しておきます。
 同じことを何度も言わせないでください。
 夫は無実です、バラされて困るようなことは何もありません!では、失礼」

堂々とした良く通る声で、そう告げると
ゆずりさんは颯爽とその場を去って行った。

後に残された清水は、平手打ちされた頬を抑えながら、
茫然自失という具合で、ぽかーんとしていた。


しかし、すぐに口元を怪しく歪めた。

「あの女・・・ いまに見てろよ。

 いずれ、その生意気な口で、たっぷりとサービスさせてやる」


一部始終を見ていた俺は、緊張していたのか、心臓がきゅっと痛くなっていた。

伏し目がちに下を向く恥ずかしげな顔が


堪らない。自らスカートをたくし上げて

太腿も露わに、下着を晒す

ゆずりさん。


その日も

米山から没収した

ゆずりさんの画像をネタに

シコシコと独り仕事を終えた後だった。もう何度も見ているというのに

見る度に、股間が激しく疼く。なぜ、今更?


既にゆずりさんの全裸さえ、

存分に見た後だというのに。。


なぜ?ただのパンチラを毎日のネタに

しているのだろうか。そんなことを考えていると、

ふと閃くものがあった。そういえば


かつて


そう遠くない過去に


同じような感覚に陥ったことがあった。

そう


あれは、


コーチの清水が


ゆずりさんを無理やり口説いてるのを


見た時だ。


清水に肩を抱かれ


唇を強引に奪われそうになった


ゆずりさん


そう、確かに、あの時も非常に興奮した。いや、違うそれよりも、もっと俺を興奮させたのは『バラされたくなかったら、


 素っ裸になって謝罪してもらおうか』


そうだ!


あのセリフだ。


心臓を鷲掴みにされたような異様な感覚だった。
あの後、俺は


清水の前に屈服したゆずりさんを妄想して


何度も何度も激しく自分を慰めたのだ。
だとすると


米山から没収した画像で激しく興奮するのは


画像の中のゆずりさんの恥じらう表情や


太腿の艶めかしさが理由ではなく


米山や庄司によって脅迫されて


ゆずりさんが辱められてることが理由なのではないだろうか?まだ疑問の残る段階ではあるが、


ただ、一つだけ確かなことがあった。
清水の下品な脅迫台詞を思い出して


俺はフル勃起になっていた。


まだヌイタばかりだというのに。。。


寝取られスキー

『自分の好きな異性が他の者と性的関係になる状況

 そのような状況に性的興奮を覚える嗜好』


これか?


俺も寝取られスキーなのか?


全く分からない。


どうしたら良いのだ!


真剣に悩んだ。


真剣に悩んでいた。そんな時、清水が事件を起こした。


その日


テニスクラブへ行くと事情通の庄司がすっ飛んできた。


「おい、田島!面白ぇことになったぞ!」


「何が?てか、唾が飛ぶからw」


「清水の奴、やらかしたよ」


「だから、何を?」


「ゆずりさんとテニスの試合をするらしい」


「は?」


「いや、だからコーチの座を賭けて

 テニスの勝負をすることになったんだ」


「は? なんで、そんなアホらしいことに?」


「清水の奴、前々からゆずりさんのこと狙ってただろ?」


「まあな」


「また言いだしたらしいんだ、
 痴漢した夫の妻が子供たちに教えるのはおかしいって」


「またかよ!こりない奴だw」


「そうだよな。で、それだけなら、ゆずりさんも一蹴するんだろうが、

 どうやらテニスの腕もたいしたことないとか言ったらしくてさ

 ゆずりさん、ああ見えて、割とプライド高いだろ?」


「まあな、プライドを持って仕事をしているな」


「そう。それで、じゃあ勝負しますか?ってなったわけよ」


「なるほど。

 それで、清水が、”負けたらコーチを辞めろよ!”とか言いだしたわけか」


「そうそう。そういうこと!」


「アホらし・・馬鹿か」
とんでもない程、バカバカしいことではあったが


ゆずりさんと清水がコーチとしての去就を賭けて


テニスの勝負をすることになった。


「ゲーム!セット!」

審判の声がひときわ大きく響く。


「マジかよ、ゆずりさん落としちゃったよ」

「なあ、ゆずりさん大丈夫かな?」

「やっぱ、女が男と対等に試合するなんて無理じゃないか?」うまく言葉が出てこない

いくらブランクがあるとはいえ

ゆずりさんは元プロだ。


庄司の言うように男女の力の差は

どうにもならないのだろうか。


いや、そんなはずはない

勝算のない勝負を

ゆずりさんが受けるとも思えない。第2セットが始まった。

第1ゲームはゆずりさんのサーブからだ。


入った!

目の覚めるような鮮やかなサーブが

清水の左前方に決まった!

清水動けない、全く動けない。

15-0


しかし、喜びもつかの間


激しいラリーの末

15-15


そして

15-30

15-40


次々とゆずりさんはポイントを落としていった。
「ゆずりさん、大分揺さぶってるようだね」


突然背後から声を掛けられた。

「あ、オジサン!」

周りの大人たちが

ざわつきながら近寄ってくる。


「これは、理事長!」

「理事長!本日は如何致しました?」


「ああ、この子に面白い試合があると聞かされてね」


試合中の清水とゆずりさんも手を止めて挨拶に来ようとする


「ああ、構いません!どうぞ続けてください」

オジサンは右手を前に出して「どうぞどうぞ」と。
「どうやら、この勝負に負けた方が、

 退職されるらしいですね」


オジサンの言葉に、清水が僅かに身を震わせる。試合が再開されるとオジサンは再び言った。


「ゆずりさん、かなり揺さぶってるな」

「え?」

「分からないか。ベースラインだ」

「え?」

「良く見てな。ゆずりさん

 ベースラインから全く前に出ていってないだろ」


「ほ、ほんとだ!」


「そろそろだな。相手の方は完全に足にきてる。

 体がデカいだけで勝てるほどテニスは甘くないんだよ」ゲームセット! ウォンバイ 重田!

オジサンの言った通りになった。


第2セットの途中から

清水はヘロヘロになって

この勝負、結局はゆずりさんの圧勝で終わった。


自信満々で自分から勝負をふっかけ、

女性と対等な条件で戦い

そして、見事に敗れた清水。


ブザマにコートに膝をついたまま項垂れる清水に向かって


「退職の件は無かったことにしましょう!」


良く通る爽やかな声が響いた。

そして、いつものポーズ。

ゆずりさんは腰に手をあて、胸を僅かに反らす。


「ですが、二度と変なことは言わないと誓ってください」

「できれば、仕事上必要なこと以外は話しかけないで頂けますか?」


無言のままの清水に向かって

観客席から怒鳴り声が聞こえ始める。

「おい!清水!返事は?」

「何無視してんだよ!負け犬が!」

「男のくせに!情けない奴!」このタイミングかな、と思った。

「ねえ、正和オジサン、

 ちょっと理事長の威厳ってやつを見せて欲しいな」


「高くつくぞw」


そう言ってから正和オジサンは立ち上がった。

「ナーイス!ゲーム!」

そこそこ威厳のある声だった。

この一言で観客席からの声がピタリと止んだ。


「良い試合でした!

 清水君、どうです?

 何も辞めることはないでしょう」


「は、はい!理事長(涙)」


「結構。では、勝者である重田さんからの提案を
 受け入れますか?」


「・・は、はい・・」


「では、もう一度、ナイス!ゲーム!」

パチパチパチ

オジサンに続いて、一斉に拍手が沸き起こった。


激しい拍手喝采の中

清水は肩を落としたまま、スゴスゴと歩き出した。

俺は密かに清水を追いかけた。
更衣室で独り俯く清水。

俺が入ってきたことにも

全く気づかない程の落ち込み具合。


自業自得とはいえ、

自分の教え子や同僚たち

大勢の前で、赤っ恥をかかされたのだ

しばらく立ち直れないのも

仕方のないことかもしれない。


だが、立ち直って貰わなくてはならない。

俺はそのための魔法の呪文を持っている。


俯く清水の耳元で、そっと

囁きかける。


「なあ、俺の言う通りにすれば、

 アンタの望み、簡単に叶うよ」


言いながら

スマホの画面を清水の目の前に突きつける。


「なっ!こ、これは!」「俺の言う通りにすれば、アンタの望み、

 叶うよ」


清水の目が怪しく光るのを確認してから、


俺は横柄に頷いて見せた。


「何でしょうか?」


それは暗に話しかけないで下さいと言わんばかりの

軽蔑しきった眼差しだった。


「話があるんだよ」


「私にはありません。失礼します」


「ちょっと待てよ!健太クンのことで話があるんだ」


「え?」


突然出てきた愛する息子の名前に

去りかけていた足を

思わず止める ゆずりさん。


その表情を見て

清水の口元がいびつに歪んだ。


「ここじゃあ話しにくいんで場所を変えよう!」


有無を言わさずに背を向けて歩きだす。


これも俺が清水に教えた作戦だ。


返事も聞かずに歩き出せば、

健太の名前が出てきた手前、

ゆずりさんは必ず清水を追いかけるはずだ。

案の定、

ゆずりさんは、清水の後についていった。


そして、清水の後に続いて、

俺の準備した場所に入って行く。


俺も裏口から入って、良く見える場所に移動する。


凍りついて驚愕の表情を浮かべる

ゆずりさん。


清水の奴、俺の言った通りに、

即座に画像を見せたのか。

それで良い。「ど、どうして、この画像を・・・」


画像を見せられて絶句するゆずりさんに

清水は、さらに畳み掛ける。


「全部、聞かせてもらったよ、全部ねw」


含みを持たせた妙な言い方に、


それまで強気な態度だった ゆずりさんに

微妙な変化が現れる。その変化を、清水は抜け目無く見逃さなかった。


「健太クンだよね?お前の息子の名前」


「そ、それが何でしょうか?」


ゆずりさん、明らかに動揺している「大事な大事な息子さんのために、

 テニスの教え子達の前で

 ストリップしたんだって?」「なっ! 」「あのガキどもの前で、

 おっぴろげたらしいじゃんw」


「い、いわないで!」


耳をふさいでも、清水の長広舌は止まらない。清水には、もっと大きな切り札がある。


だが、ゆずりさんの動揺する姿が物珍しくて


愉しいのだろう。

なかなか言い出さない。

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