欅坂エロ小説 |
- 1024: 名前:JM投稿日:2018/03/07(水) 17:21
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笑顔が消えた日
センター。
アイドルならば、誰もが憧れるポジション。
誰よりも目立ち、注目を集めるポジション。
そして、誰よりもプレッシャーの大きいポジション。
平手友梨奈は、デビューシングルの『サイレントマジョリティー』から現在に至るまで、全てのシングルにおいてセンターを務めてきた。
当時15歳という断トツの若さで、愛らしいルックスに加え、驚くべきパフォーマンスと、優れたリーダーシップを発揮してきた彼女だったが、その裏ではかなりの苦労があった。
「私ばっかりが注目される」
「私なんかより、もっと他の子の頑張っているところも見てほしい」
友梨奈は、口癖のようにそう言っていた。
結成当初は笑顔を振り撒いていたものの、それも徐々に翳りを見せていた。
センターのプレッシャーは、当時15歳の彼女にとって、あまりにも重過ぎるものだった。
そして、崩壊が始まった。
この日は幕張メッセでの仕事だった。
欅坂46と握手出来る、ということで、早朝から長蛇の列であった。
前日に地方からやって来て現地で泊まる、といった強者もいたらしい。
「ファンの皆様と直接お話が出来る貴重な機会ですもの、とっても楽しみです」
キャプテンである菅井友香は、車の中で笑顔で言った。
欅坂46は、ライブハウスで容易く握手が出来るようなグループではない。
巨大な施設を貸し切って、その為に何千何万もの人間を動員する。
一つのシングル、ないしアルバムを買っても、全国握手会の場合、会えるのは数ヶ月先の話である。
つまり、それだけ大規模というわけだ。
ファンだけでなく、メンバーにとっても楽しみであることは同じだ。
「ねえ、お兄ちゃんは一緒にいてくれるの?」
平手友梨奈が、後ろの座席から顔を出した。
「喜べ。今日はお前のレーン担当だ」
「本当!?」
「この為にわざわざ警備会社と掛け合ったんだ。ちょいとすったもんだはあったが、認めてくれたよ」
「嬉しい!ありがとう!」
友梨奈はパッと花の咲いたような笑顔になった。
反面、隣の友香は少し残念そうだ。
「お兄様も大変ですね」
「こうでもしないと、あいつは一日中ヘソを曲げるからな」
俺は苦笑した。
しかし、俺はこの決断が正解だったことを、強く実感することになるのだった。
無論、今はそれに気がつくはずも無かったのだが。
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