幾多の愛唄 |
- 01: 名前:suzu◆RaBQ0VHc投稿日:2013/08/23(金) 14:52
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短編集です
- 02: 名前:suzu◆RaBQ0VHc投稿日:2013/08/23(金) 14:52
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第一話 クロッカス
- 03: 名前:suzu◆RaBQ0VHc投稿日:2013/08/23(金) 14:55
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俺には愛する人がいた。
いつも迷惑ばかりかけ、時には暴力まで振るっていたのに俺の事を愛してくれた女がい た。
今となっては、寝室にあるベットの横で永遠に笑っている。
その笑顔を見る度に、心がギュッと締め付けられる。
もっと愛したかった
ずっと愛したかった
でも、不器用な俺にはそれができなかった。
これで何回目だろう
この写真に向かってこの言葉をかけるのは。
ごめんな、麻里子ーー
- 04: 名前:suzu◆RaBQ0VHc投稿日:2013/08/23(金) 15:10
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始まりは四年前。
桜の木に花が開きそうな四月の初めの頃だった。
新人社員だった俺は、慣れない仕事を終えて夕飯を買いにコンビニへと向かっていた。
業務中に溜まった疲労やストレスが下半身に集中し、足取りが悪かったのを覚えている。
店内に入って目に飛び込んで来たのは派手な服装をしている一人の女性。
身長は俺と同じくらいで体型はモデル並。年齢も俺と同じぐらいだろう。
普通の女の子では着こなせないであろう洋服を完璧に自分のモノにしている彼女は、コンビニの中で一際目立っていた。
そんな彼女の手には一本の缶コーヒーが握られている。意外にも庶民的だったからか、微かに親近感が沸いた。
荒野に咲いた一輪の華のように堂々としている彼女に釘付けになっていると、視線を感じたのか、彼女はこちらを振り向き、歩みよって来た。
「さっきから感じてたイヤらしい視線はあなただったのね。なに? ヤりたいの?」
彼女は顔を近づけ、ピンク色の毒を吐く。
顔との距離はわずか三センチほど。少し動かせば唇は重なりそうだ。
肌もキメ細かく、ほのかに香る甘い香りが鼻をくすぐっ
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- 05: 名前:suzu◆RaBQ0VHc投稿日:2013/08/24(土) 19:04
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それからと言うもの、俺と麻里子はほぼ毎日連絡を取り合うようになり、頻繁に夜景を見に行ったり、食事を取ったり、遊園地に行ったりしていた。
日を追う毎に二人だけの時間が増え、それに伴って俺の中では麻里子の存在が大きくなっていた。
少しずつ膨らむ恋蕾は、とうとう開花寸前まで迫っていた。
初めて会ったあの日からちょうど二年目の今日。これから麻里子とレストランに行く事になっている。 俺はもう心の中で決めていた。麻里子に"告白"しようと。
「お待たせ〜。待った?」
「いや。俺も今さっき来たばっかりだよ」
「そうなんだ。早く中に入ろうよ。お腹すいちゃった」
高級感溢れるレストランは告白する場所にピッタリだ。
店内に流れるスローテンポな洋楽は、抑えきれない感情を緩和してくれている。
条件は整った。あとは勇気だけ。
事前に下調べした事は内緒にしとかないと麻里子にちゃかされてしまうな。
いつものように楽しい時間がゆっくりと進んで行く。それに従って心臓の鼓動が速くなる。
「なぁ麻里子」
「ん? どうしたの?」<
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- 06: 名前:果汁クソ%投稿日:2013/11/07(木) 19:08
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クソかもしれねえ
カスかもしれねえ
誰も読んでくれてねえかもしれねえ
けどよ
スレを建てた以上最後まで書くのが男ってもんじゃねーのかなあ
- 07: 名前:suzu◆RaBQ0VHc投稿日:2014/01/08(水) 21:10
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いくら謝っても、いくら涙を流しても消し去る事のできない過去。
どんなに叫んでも、いくら名前を呼んでも帰って来ない麻里子。
どうして早く気づかなかったのだろう。
いや、本当は気づいていたけど麻里子に手を出したあの日以来、心の闇に消されていたんだ。
俺には麻里子しかいない。
麻里子は俺のすべてで、俺の人生そのものだった。
「なぁ麻里子……俺、どうしたらいいかな? 帰って来ないってわかってるのに、今でもお前を待ってるんだよ……。じゃあ、俺寝るね。おやすみ、麻里子」
俺は、ベッドに入ると何かに誘われるように夢の世界へと旅立って行ったーー
どこか遠くで小鳥の囀ずりが聞こえる。それに、気持ちがいいほどポカポカしている。
夢なのに関わらず意識がはっきりしているのは、明晰夢だからだろうか。
俺は、太陽の眩しさに思わず目を開け、ゆっくりと身体を起こした。
「なんだこれ……すげぇ……」
目の前に広がっていたのはどこまでも咲いているクロッカスの花。
地平線の向こうまで埋め尽くしているんじゃな
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- 08: 名前:suzu◆RaBQ0VHc投稿日:2014/01/09(木) 21:59
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今の感情を言葉で表すのは難しい。
夢でも麻里子に会えた喜び、麻里子に対する罪悪感、自分への怒り、様々な想いが入り交じり、それはやがて涙に形を変えて溢れ出す。
その涕は頬に小さな川を作り、一つ、また一つと静かに落ちていく。
「なんでそんなに泣いてるのよ。ほら、おいで」
麻里子の一言一言が涙腺を刺激する。
やめろ。
やめてくれ。
俺は最低な男なんだぞ。なんでそんなに優しくできるんだよ。
気がつくと、俺は麻里子の言葉に甘えて胸の中で泣きじゃくっていた。
「ごめん麻里子……俺……俺……」
「わかってるよ、あなたが不器用だって事ぐらい。あの時はね、あなたの気を引きたくて出ていったの。心配して追いかけて来てくれるかなって思ったけど……死んじゃった。ごめんね」
あの時、俺は麻里子が出ていって心配なんかしなかった。すぐに帰って来ると思ったから追いかけたりしなかった。
心配して追いかけていれば、麻里子は死なずにすんだのか?
悔やんでも悔やみ切れない。今すぐにでも殺してほしい。
汚れた袖で涙を拭い、目を
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