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  一緒に居る理由〜それぞれの思い〜

17: 名前:千手観音投稿日:2013/08/21(水) 22:28
【NO.3由依と麻友】

私はいじめられていた。
誰も頼れず、心も開けず、ひとりぼっち。

何故いじめられるようになったかはわからない。
気がついた時にはひとりぼっちでいじめられていた。

“私が、一体何をしたの?”

“私、何か悪い事した?”

“私は……”


心に渦巻く、いじめに対しての感情。
でも、言う事は出来ないまま…

『麻友、遅刻するわよー!』

「はぁい…」

母は何も知らない。私を気にしても居ない。
知った所で悪化するか意味ないかだったから、言わなかった。
父は会社が忙しくて最近は泊り込みらしい。

最近は行くふりをして、近くの図書館で時間を潰している。

「…今日はこれにしようかな」

単行本を手に取り、もくもくと読みふける。

彼女に出会ったのは、そんな時だった。

「なぁ、本好きなん?」

可愛らしい声に、柔らかな訛りだった。
私が上を向くと、銀縁の眼鏡をかけた彼女がいた。
片手には文庫本を持っていた。

「あなたは…誰?」

「あたしは、横山由依です」

「由依、ちゃん…」

「麻友ちゃん、外で遊ばへん?」

「私、運動神経無いし…」

「関係ないって!な、遊ぼ!」

驚くほどに人懐こい彼女に、私は心の何処かで惹かれていた。
私は彼女に半強制的に外に連れ出された。

涼しげで、ゆったりと流れる川。
彼女は足を川の水につけて、何故か冷たがっていた。
私も彼女と同じように足を川の水につけて座った。

「何かようなの?外に連れ出したりして」

「…もう、我慢しなくても大丈夫ですよ、麻友ちゃん」

「…何を…言って…」

優しい柔らかな声と、屈託ない純粋で無垢な笑顔。

何故だか、涙が零れた。
頬を伝って、私の手の甲に落ちる。

「私は、麻友ちゃんの味方や」

「…味方…」

「ずっと、守りますから」

純粋で無垢な、明るく人懐こい笑顔。
私は心から感じた。
“この人なら、私を救ってくれる”
そう思ったら、次から次へと涙が溢れた。
今まで塞き止めて居たのが堰を切ったかのように。

「大丈夫ですよ、私はずっと此処にいますから…」

彼女は私を思い切り抱きしめて、優しく言ってくれた。
私は彼女の温もりを手放さないように、抱きしめ返した。

「…っ本当に…私、を…救、って、くれ、るの?」

泣きじゃくりながら、縋るように呟く。

「麻友ちゃんはもう、“家族”ですから」

私を一層強く抱きしめながら笑う。

「“家族”…?」

「はい!どんな人でも住める“家”と皆仲良く出来る“家族”です」

「私、何でもする…お礼、したいから…」

私はようやく泣き止んで落ち着いた。
恥ずかしいぐらい泣いた気がする。
何分、いや何時間泣いたか検討もつかない。


ひとりぼっちだった私に、親友が出来た。

そばに居て、支えてくれる

唯一無二の、“家族”が…

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