ういーく アンド うぃーく |
- 14: 名前:クテシホン投稿日:2013/08/24(土) 10:32
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「はあ? 用がないってなんなの? 普通ね、用があって電話するんだよ。なのにあんたね、……」
いきなりの説教に驚くしかない。知らないひとに怒られるという貴重な体験はなかなかないから、対応の仕方が分からない。とりあえず謝るのが先な気もするが、理由も伝えないといけない気がする。だけど、確かめたいからかけた、じゃ恰好がつかない。嘘を付くのは簡単だけど、追求されたら終わり。隠し通す自信はないから正直にやっぱりいこう。
「すいません、電話繋がるか気になったので……。この電話番号普段見ない型の番号なので」
あとは向こうの出方に従って動く。いかに話を逸らすかなんていうのは簡単なものだけど、核心が聞けないのと、相手に逸らし方を伝授することになってしまう。まあ、逸らされても同じこと聞けばいいだけだが。
「あははは、変なの。まあいいや。あの話信じれた? まあ、無理でしょうけど」
この人にとって、この“死”の宣告は仕事なのだろうか。しかも、元気でピンピンしている人に対しての。こんなことを今にも病気で死にそうで弱っている人にやったら軽蔑する。
「いえ、ぜんぜん信じれません」
なんにも信じれない。さっき知らない美人さんから連絡先を渡され、“死”の宣告をされたことすべてが。第一、死なんて自分には遠く関係のないことだと思っていたのに。
「基本、私の仕事はなんにもない限りこれだけだから。じゃあね。用事があったらまた。精一杯生きろよ」
さよならを言う前に切られた電話。自分の気持ちが疑心と不安で満たされよく分からないことになっていた。
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