即興リレー |
- 41: 名前:名無しさん投稿日:2013/09/25(水) 01:36
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結局、俺は亜樹と別れた。
何度も土下座をし、ただひたすらに別れてほしいと懇願を続けた。亜樹はそんな俺を見て涙を流しながら頑なに別れを拒んだ。最後まで聞き分けのない女だった。
それでも俺は我慢して懇願し続けた。もはや意地の張り合いであった。そうして、ようやく亜樹は折れてくれた。
離婚届にサインと判子を押した亜樹の顔を俺は一生忘れることはないだろう。憎悪に満ちた顔。腫れた瞼とくぼんだ頬は、まさに阿修羅像そのものであった。
自宅を手放し、慰謝料も払った。俺が出来る最善のことを尽くし、亜樹と無事に離婚をすることが出来た。明日香にそれを伝えると、彼女は複雑な顔を見せたが、最後は笑ってくれた。
「バカな男」
俺の胸の中で泣く明日香をそっと抱きしめ、俺たちは歓喜の余韻に浸ったのであった。
明日香と再婚をし、俺は今幸せの絶頂期を噛み締めるような毎日を送っている。前妻とは味わえなかった幸せ。これが本当の幸せだとようやく気付くことが出来た。
「どうしたの?」
「うん? なんでもない」
「変なの」
最愛の妻は微笑む。毎日見ていてもけして飽きることのないその顔。また一段と美貌が増したような気がする。
「なあ、明日香」
「なに? あなた」
「俺と結婚して正解だった?」
「当たり前でしょ。ねえ、あなたはどう? 私と結婚して本当に良かったの?」
肩にかかる重み。シャンプーのいい匂いがする。夫婦共同で使っているというのに、彼女の髪はどうしてこんなにもいい匂いがするのだろうか。
「俺も一緒だよ。明日香と結婚出来て本当に幸せだ」
「嬉しい」
明日香の大きくなったお腹を撫でる。すると、お腹の中がボコッと動いた。
「動いた。動いたよ明日香」
「当たり前じゃない。生きてるんだから」
「そうだよな。生きてるんだよな。元気に産まれてくるんだぞ」
ここで俺は名前をまだ考えていないとこに気が付いた。どんな名前にしようか。
「ま、時間はまだまだあるし、ゆっくり考えるか」
透き通るような青空が見える。この空のように俺たちの今後もきっと明るいことだろう。そうであってほしい。
「明日香。愛してる」
「私も愛してる」
風がピュンと吹いた。
<完>
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