友達以上恋人未満 |
- 91: 名前:拓夢◆Rx.AioX.投稿日:2014/02/16(日) 05:14
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窓からギラギラと日の光が差し込み、少し目を開けただけでとても眩しい。半袖短パン、扇風機をつけて寝たというのに夏特有のむしっとした空気が部屋中に漂っていた。
ふとカレンダーに目をやる。あと5日。毎年ゆりあと言っている夏祭り。少し焦りを感じる。
夏祭りに行こうと誘ってもどうせ断られるに決まっている。ゆりあは可愛いから他の男なんですぐ見つかるはずだ。心配しなくても、いいや。
「今年は明音とーー」
インターホンが鳴る。何時もなら母さんがはーいと返事をして出るはずだったが、あいにく母さんは旅行に行っている。ここは居留守という形で誤魔化そう。
そして言いかけた、
「今年は明音と一緒にーー」
二度目のインターホン。しつこい。
流石にこれは出るべきか、観念して渋々出ることにした。
タンスからタオルを出し、寝汗を吹き、玄関に向かう。その間にも4回くらい鳴らしてきた。そんなに焦らなくても出ますよ。
「はーい」
ドアを開けるとそこには俯いたゆりあが居た。後ろで手を組みながら恥ずかしそうにつま先を地面にトントンとついているゆりあが。
「ねぇ、夏祭り、どうするの?」
それが気になって来たのか。そう思うと喧嘩した事など忘れ、全てが愛おしく思えた。もう明音の存在など頭には無く、目の前のゆりあだけしか見れなくなっていた。
やっぱり、この人がいい。この人と行きたい。そう思うほど、喧嘩した事が恥ずかしくなってきた。
「ねぇ、聞いてる? どうするの?」
「え、あぁ、ゆりあがよければまた去年みたいに行こうよ」
中々返事をしない僕を不快に思ったのだろう、怒り口調で聞いてきた。でも、そんな事すらも愛おしく思えてきた。僕はゆりあがいないとだめなんだな。改めてそう思った。
「本当に? よかった、じゃあ夏祭り当日、家に行くから」
「うん、ばいばい」
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