ダレも知らないオレの顔 |
- 50: 名前:ジョックロック投稿日:2015/03/04(水) 04:17
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大人が沢山いるフロアにいても
匠はやることがない。
梅田は大幹部に囲まれて楽しそうにしているし
匠を気にかける素振りもない。
「匠!暇なら朱里の部屋でも覗いてきぃ〜や」
ヨシさんも酒に呑まれてこの有様だ。
「なんならカイてこいや〜!」
匠がその意味がわからない事をいいことに
ヨシさんはそんな事を言いながら笑っている。
幹部もなんだか笑っているし梅田もヨシさんの事を見ながら苦笑してる。
匠だけがその言葉の意味を知らないようだ。
テーブルの上にローストビーフが並べられていて
匠はそれをフォークで刺して食べた。
「うまっ…」
思わず本音が出る。
女の子の部屋に無断で入なんて匠には出来っこない。
それを分かってて言ってくるからヨシさんは意地が悪い。
「ホンマうるさいねんけど」
朱里が小言を言いながらフロアに降りてきた。
「退屈やんな?一人でご飯食べるのも」
向かいのテーブルに座って朱里もローストビーフを食べだす。
「まぁうまいねんけどなぁ」
口元を手で隠しながら笑う。
「朱里は何歳なの?」
下を向きながらそう尋ねる
「ん?朱里は17歳の高校2年生よ」
手で口元を隠しながら言う。
「なら同じ学年だ」
「へぇ〜ホンマに?タメなんや?そうかそうか〜」
口をモグモグさせながらうんうんと頷く。
それからは数分の沈黙。
それを破ったのは匠の方だった。
「かいてこいってどういう意味?」
「なんて?」
「いや…ヨシさん…お父さんが朱里の部屋行ってかいてこいって…」
朱里はそれを聞くと、
「は?それホンマ?」
と、少し語気を強くしていった。
「本当。みんな笑っているけど俺だけがわからないみたいだから
聞いてみた…関西弁かなんか?」
「いや…わからん…朱里もしらん…うんホンマにしらん」
そう言う朱里だが、その後にヨシさんの元へ行き、
頭を一発はたいてから「しょーもないわ!アホか!」
と言って戻ってきた。
ヨシさんはヨシさんでなんのこっちゃ
といった表情で朱里を見ていた。
再び席につくと、ため息を吐いてからは
何も口に出さなかった。
匠も、なんか言っちゃいけないことだったのか
と罪悪感を抱えながら無言でローストビーフを食べた。
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