ダレも知らないオレの顔 |
- 49: 名前:ジョックロック投稿日:2015/03/04(水) 03:13
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「すぅーっ……ふぅーっ…」
タバコをプカプカ吹かしながら考え事をする匠。
もし自分が普通の生活をして普通の両親と平凡に暮らせていたら…
(ああいう風にニコニコ笑っておべっかつかってたのかな〜)
朱里を悪く言うつもりはないが、匠の考えにはトゲがあった。
幼くして両親というモノに見放されてしまった匠は
本当に幸せだと思える瞬間が限りなくゼロに等しい。
歯を見せ顔をくしゃくしゃにした笑顔をした覚えがない。
顔の筋肉が強張っているんではないかというほどに
匠は笑顔を見せない。その代わりに眉間には力が入る。
喜怒哀楽という表現があるが、
それは匠にはなく、あるのは真ん中を切り抜いた
『怒・哀』の方が多い。
吸い殻をトントンと落とすと、
騒ぎの中へ入ろうと足を向けた。
「ん?………」
が、足を向けた先には先ほど見た美少女を視界に捉えていた。
「あっ…大丈夫やで?パパには内緒にしとくから」
「ん?………あぁそういうこと…」
匠は朱里に一服していた所を見られた事を悟ると
地面に目線を向け、女の横を通り過ぎた。
「朱里のことはさっき紹介したやんな?」
「あ…うん…聞いた」
「ほんならキミも何者か教えてよ」
「叶…匠…」
おしとやかには程遠いがおてんばほどでもない関西弁の女の子は
匠の名前を聞くと
「匠か…ほんならたっくんでいい?」
「は…?」
「うん…ええな!それにしよ!ほなよろしくね
たっくん」
朱里はそう言うと匠の両手を取り、
無理矢理握手させた。
「よろしく……吉田さん」
ひき気味に言うと何かが不服だったのか朱里は
「呼び捨てでええよ!朱里って…ほら!呼んでみて」
「あかり………」
「うんうんそれでいいねん」
朱里はそう言うと玄関のドアを開けて匠を騒ぎの中へ招き入れた。
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