終わる秋 |
- 01: 名前:名無しさん投稿日:2014/04/09(水) 21:50
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晩秋の夜、
引き締まるような澄んだ、冷えた空気の夜道。
出し忘れた郵便物を、
回り道をしてポストに投函して、
いつもと違う場所を通る。
まだ開発途上の、郊外の新興住宅地、
歩いているうちに周囲は暗くなり、
星と、煌々と光る満月が空に浮かぶ、
雑木の残る空き地の横を進んでいた。
秋の終わり、
虫の声も、大合唱という趣は無くなり、
一匹だけの、はぐれたような閻魔蟋蟀が、
途切れがちに侘びしく歌っているだけだった。そのとき、、、
その虫の音の向こうから、
微かな違う音が聞こえてきた気がした。
耳を澄ます。
連続的な、喘ぎのようにも、うめきのようにも聞こえる音・・・。
気になって、音のする方角に目を凝らす。
空き地の奥、闇の向こうに、
何か蠢く影があった。
引き寄せられるように一歩踏み出すと、
僕は空き地の中へと入っていく。
街路灯の灯りから外れると、辺りは一層暗く、
しかしそれ故に、月明かりに照らされ、
影の輪郭が明らかになっていく。獣だった。
いや、獣のような雄の人間だった。
腰を振りたてている。
その足元に丸まるように
<省略されました> [全文を見る]
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