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  ヒメユリ

01: 名前:仙人掌投稿日:2017/10/15(日) 12:57
荒廃しきった分校。
響く怒号、割れるガラス、
血塗られた廊下。
机のない教室。
秩序のない世界。
此処にあるのは、『野心』
彼女達の狙いはこのヒエラルキーの頂点に立つということ。
これだけの為に、自分の身体を痛めつけている。

「オラ、そんなもんかよオイ!」

「ぐっ…うぅっ…許して…下さい…」

また一人、このヒエラルキーの最下層へと転げ落ちる。
ここのルールは単純。
強いものが勝ち…弱いものは淘汰される。

世間から見捨てられた野良猫たちは、
掌に感じる痛みと共に、今日もまた己の拳で世界を生き抜く…



28: 名前:仙人掌投稿日:2017/11/20(月) 04:47

「まなふぃ!…あんたはやっぱり最強やな」

メイは、愛奈に駆け寄ると労いの言葉をかけた。

「美玲ちゃんの仇は取れたと思う…私があそこを取り返すよ」

メイと愛奈はすっかり勝ったものだと莉菜から背を向けていた。

莉菜のだらんとした手が、ギュッと握られているのも二人には見えていない。

莉菜は顔面を真っ赤にしながら、のっそりのっそりと、二人の元へと歩きだす。

ザッザッ…という砂利の音が近づいているのを、
そこでようやく気付いたのはメイだった。

「まなふぃ!!!!」

莉菜の渾身のストレートが炸裂する!

バキィッ!!!!!

メイは愛奈の背中を押し、自分が莉菜の拳の餌食になった。

莉菜はメイの顔が自分に向き直るより先に二発目のアッパーをメイの鳩尾に打ち抜く!

メイは身を挺して愛奈を守ると、莉菜の打撃になす術なくその場に崩れ落ちた。

「メイ!…」

メイを見下ろす莉菜の眼はカッと見開かれ、
振りかざした拳が、無防備なメイに振り抜かれるのに時間を要さなかった。

「メイ!!!!」

体重を乗せた莉菜の一撃に、
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29: 名前:仙人掌投稿日:2017/11/24(金) 03:23

強がってるけど、このコ、私の蹴りをモロに喰らってるはず…
ダメージが薄い…なんてことはないでしょう!?

シュッシュッ!

莉菜が拳を振るうたび、口からは空気が漏れる。
これは、ボクサーなら誰しもがやる行動だ。
こうすることによって、無駄に体力を消費せず、効率よく相手にダメージを与えることができる。

しかし、ボクサーの弱点は、脚だ。
棒立ちになると、威力が伝わらない。
しっかりと踏み込み、腰を切ることでパンチは威力を発揮する。

愛奈の狙いというのは、まさにそれだった。
肉を切らせて骨を断つ!

多少のダメージは仕方ないと愛奈は莉菜の射程距離に自ら入る。

莉菜は愛奈が脚を狙ってくることは分かっていた。

「シュッシュッ!」

莉菜のコンビネーションが愛奈の顔面を捉える!

「フンッ!」

愛奈はそれを見越したうえで、回り込むと莉菜の左足にローキックを放つ!

「ぐぁっ!」

呻くように声を上げるのは莉菜の方だった。

左の脛へ鋭い痛みが走る!

莉菜は足を上げて膝を曲げる。
その表情は苦悶を訴えていた。
<
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30: 名前:仙人掌投稿日:2017/11/24(金) 04:04

「死ね!!!!!」

莉菜の拳は、愛奈を…



ドカッ!!!!!

(えっ…!?)


捉えていなかった!

莉菜が振り下ろした拳を掴んだ愛奈は、
愛奈をグイッと引き寄せると、形勢を逆転させるかかと落としを見舞った。

莉菜は思いもよらなかった反撃と、首にのしかかった痛みでうつ伏せに倒れた。

打ちどころ次第では失神も免れなかったであろう愛奈のかかと落としが決まると、

愛奈は無理やり身体を起こそうとする!

(今や!今いかんで!いつ倒すねん)

身体にムチを打つように手で地面を押す。
満身創痍、莉菜に残されたダメージは大きいが、

愛奈には、美玲や芽依の想いに応えるという大きな原動力があった!

思いの強さは、目の前の強敵を上回れる…そう信じていた!



莉菜も手を震わせながら、それでもなお立ち上がろうとする。
それは意地に近いものだった。
一緒に頂点を目指していた原田葵が堕とされたことへの怒り
それが梨菜を突き動かすものだった。

「立ちやボンクラァ!…決着つけんで!!!!!」

「クソ
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31: 名前:仙人掌投稿日:2017/11/28(火) 05:12

「まなふぃ!…まなふぃー!」

かすかに聞こえる声に、意識を戻す愛奈。
愛奈は顔面が腫れ上がったメイに身体を起こされる。

「メイ………」

視線の先には、莉菜と葵が地面に転がっている。

「今度こそ…やったんやな!まなふぃ!」

「…みたいやわ」

愛奈も内心自分がやってのけたことに現実味を抱けずにいる。

「難波の獅子…あんたはホンマに最高や!」

腫れ上がった顔でにこやかに笑うメイに、愛奈も口角を上げた。
莉菜との戦いで見せた不気味な笑みではなく、歓喜の笑みだ。


噂が駆け回るのは早かった。
一年B組、上村莉菜、原田葵を引きずり下ろした
『高瀬愛奈』彼女の名は勿論A組の耳にも入ることになる。





「あら、こんなとこにいたんだ?」

「どこにいようがあたしの勝手だしな」

「ふふっ…まぁね…ところで、聞いた?」

「あー、B組だろ?」

「井口…キミはどうするつもり?」

「なんだろーな…あたしは頭使って動くの苦手だからよ…」

「キミを見てれば分かるよ。一人でこのクラスの輩を何十人も
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32: 名前:仙人掌投稿日:2017/11/28(火) 06:02

「オイ!おめーらなにジロジロ見てんだ!?あぁっ!?」

莉菜は荒れていた。
葵は休み、莉菜も一瞬にしてクラスでの立ち位置を失った。

あれが高瀬に負けた上村莉菜か、なんだちっせー奴だな…
あんな奴がB組の頭だったのか?…B組ってよえーのか?

ボソボソと聞こえる声に、莉菜が牙を剥く!

「誰が雑魚だって!?」

莉菜の血走った眼は、まだ牙を抜かれてないことを表している。

「あっ?なんだよ…ここはA組の廊下だけど?」

「は?A組専用の廊下じゃねぇだろ?莉菜がどこ歩こうが勝手だろが」

「お前…ここ一帯で喧嘩しようってのか!?あっ!?」

A組の生徒に凄まれる莉菜。
しかし、莉菜にとってこんな奴らは眼中にない。

そのはずだった。

「上等じゃん、きなよ?ほら」

莉菜がファイティングポーズで構える

首は重く、脚はパンパン。
激闘の1日後で莉菜の身体は満身創痍のままだ。

「なめんなよコラァ!」

A組の輩が莉菜に向かって襲いかかる!


一人の大振りのパンチをするりと避け、得意のパンチで応戦する!はずが、

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33: 名前:仙人掌投稿日:2017/11/30(木) 13:58

「ったく、…」

美玲は、自分が作り上げた残骸ロードを歩き、今にも倒れそうな莉菜に手を差し出す。

莉菜は差し出された手をジッと見る。

「あっ…?なに?」

「掴まりや…アンタもう一人で立てないんやろ?」

「…いらねぇよ…誰が助けろって頼んだよ」

莉菜は素直に頷かずに悪態をつく。

「まぁそうだな…助けてくれとは言われてないけど、話は聞いたからさ…愛奈に負けたんやろ?」

「チッ…うるせぇな…だったらなんだよ!みすぼらしいってか?…あんなに粋がってて偉そうにしてて
負けたのが惨めだってか!?お節介だったらいらないんだよッ!!」

「愛奈は、アンタのこと、今までで一番や言うてたよ」

感情的な莉菜を宥めるように、美玲は落ち着いた口調で話し出す。

「あのコ、人のこと褒めたりせんから、ホンマやで」

「ハッ…だからなんだよ」

莉菜は肩で呼吸をしながら、それでもなお悪態をつき続ける。

「アンタのその強さ、B組の為に使ってくれないかな?…」

莉菜は目の前の女の言っていることがわからなかった。

「はっ!?しらねぇ
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34: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/03(日) 03:09

場面は変わり体育館、
ダンッダンッ!とボールが地面を叩く音がする。

「…それを私たちに伝えたところで…どうにもならないと思うよ?」

「はい!もちろんっす!理佐さん!」

理佐と呼ばれた女は、ボールを高く放り投げると、
キュッキュッとシューズの音を鳴らしながら、高く飛び上がる。

そのボールは、レシーブすることも困難な凄まじい威力で壁から跳ね返った。

「お見事です!…」

理佐はその言葉にアクションをするでもなく、淡々とボールをカゴから取る。

「まぁ、私たちにたどり着ける骨のある奴なら…
それ相応のおもてなし…させてもらうけどね」

腕を組みながら、壁にもたれかかる美女…

「ま、愛佳さん!…」

志田愛佳…渡邉理佐に負けず劣らず欅分校の中でも高い地位を誇る。

「鈴本のところが壊滅するんなら、今は勝手にやらせとけば?」

「え…?」

「うちらにとっちゃ、あいつらが消えれば儲けじゃん」

「まっ…愛佳さん…」

「ま、ミユが本気出すんなら、そこでジ・エンド
だと思うけどね」

「理佐さん!………」
<
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35: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/05(火) 17:50

「………」

友梨奈は、相変わらず金魚のフンの如くついてくるねるを無視しながら、
小説を読む。

そこに一人の訪問者が現れた。

「よう!…始業式…以来だな?」

友梨奈の前に現れたのは、片目に掛かる前髪が印象的な、生徒だった。

「あっ…」

友梨奈はスッと立ち上がり、その女性徒を見る。

「おお!覚えててくれたんだな!」

女性徒は目を開き大きくリアクションを取る。

隣にいるねるは、キョトンとしながら、友梨奈と女性徒を交互に見る。

ぺこりと会釈をする友梨奈に首を傾げる。

「あれから…どうだ?ウチのバカなヤンキー共に絡まれてねぇか?」

女性徒はおとなしい友梨奈が気がかりで仕方がないようだ。

「いえ…大丈夫です…」

「ところでよ!お前…ダンスは好きか?」

「そのことで、…ミユさんに…」

「おぉ!なんだなんだ!?」

そう、女性徒はミユ。
欅分校ダンス部のトップだ。

「私…ダンスは好きです…」

友梨奈の言葉を聞いたミユはまた大きくリアクションを取った。

「おお!!そうかそうか!ダ
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36: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/05(火) 18:20
ダンス部部室。

ミユが顔を出すと、
下っ端たちが頭を下げる。

「ミ、ミユさん…あの…」

「あ、なんだよ?」

「い、いえ…来客が…」

ミユは入るなりミユに背を向ける女を見つける。

「あん?…誰だアイツ」

ミユの一言に、女がくるっと振り向く。

「ミユ、あたしのこと、忘れたのかよ?」

「チッ…そんなこったろーと思ったよ…茜」

「ざまぁないね、あんたらの下っ端…」

ミユはあらかじめ敷かれたマットの上に乗ると、ストレッチを始める。

「あー、あたしもそう思うよ」

体を捻りながら茜に呟く。

「武闘派のケヤダンがいとも簡単に倒されちゃよ、こっちとしても納得行かないんだよね」

「別に私は武闘派なんて言った覚えねぇんだけどな。ココ、ダンスするところだしよ」

「今回の件、アンタは直接関わる気ないんだってね?」

「あー、ねーな…このバカ共がやったことだ。
自分のケツは自分で拭いてもらわなきゃ困る」

ミユの憮然とした態度が気に食わない茜は、
少しづつ語気を強めていく。

「ミユ…お前少しはトップ
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37: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/05(火) 18:35
「ミユさん…私たち…やっぱり黙ってられません!」

「………」

「茜さんより先にあいつらやらせてください!」

「…おめぇらじゃ勝てねぇよ」

「そ、そんなことは!」

「現に負けてんだろうがよッ!?」

ミユの一喝に静まる室内…

「すっ…すいません…でもっ!」

「でももへったくれもあるかバカが!」

「ひっ…」

「おめぇら自分らだけでなんとかするんじゃなかったのかよ?なぁ?」

「えっ…」

「なんで茜にあんな馬鹿にされて否定の一つも出来ねぇんだよ!?あぁっ!?」

「す…すいません…」

ミユの凄みに圧倒され萎縮する部員。

「これ以上あたしを…イライラさせんなよ…」

「ご…ごめんなさい…」

「一人にしてくんねぇか?…おめぇらのその情けねぇツラ見てたら…
ぶん殴っちまいそうだ…」


「は…はいっ………すっ、すいませんでした!」

ミユは背を向けた。
背を向けたミユは、失礼しますという声と、引き戸が閉まる音が聞こえると、
自分への苛立ちに、深いため息を漏らした。



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38: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/05(火) 19:00
翌日、欅分校は、更に血気盛んになっていった。

「おいおい!…なんだってこんなに3大勢力の群勢がいやがんだよ!」

『チームサンレツ』

リーダーのマツリは、欅分校で起きている事態が飲み込めていない。

「細々と暮らしてたのによ、なんでこうなるんだよ」

ズンダもまたマツリに同調するように嘆く。

廊下では、ヒラテユリナを出せ!ナガハマネルはどこだ!
の怒号で溢れかえる。

「ヒラテ…ユリナ…って…あいつか?…ナガハマネル…も…」

男のように長いズボンを穿いた奈那は、辺りで知っている名前が呼ばれるたびに、
あの二人がただ事ではないことをしでかしたんだと考えた。

「オイ!そこのお前!…平手友梨奈と長濱ねる…知ってるか!?」

茜の下っ端が息巻く。

「そいつらが、どうかしたのか?」

奈那は詳しいことが知りたかった。

「ケヤダン襲撃事件だよ!…そこにいた二人組が、
平手友梨奈と、長濱ねるだ!…知ってんのか?しらねぇのか?どっちだ!?」

「フンッ…あたしはそんな奴知らないね」

「チッ使えねぇ!…」

2年の廊下は
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39: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/05(火) 19:40

「やーもう!なに!本当に!」

バレエは華麗な身のこなしで混沌とする廊下の隙間を通る。

「ハチの巣が、本当にハチの巣になっちまってる!」

イッピツも同様に、逃げる

「コイツら、守屋さんとこの…下っ端!?」

バレエは、タコ殴りにする女の顔に見覚えがあったようだ。

「守屋さんって…3本柱の守屋さん!?」

「守屋茜…金成中…欅分校きっての実力者。
鍛え上げられたタフな身体で、連戦連勝
そんな守屋茜に憧れて部室の門を叩くものも多い。
テニス部、でも部員はラケットを持ってない
別名、喧嘩部」

「こんな時でもナーコはこれだもんな!…早く次の曲が始まる前に、ココ、抜け出すぞ!」

イッピツは、マイペースを貫くナーコの手を引きながら、
バレエが掻き分ける道を走る。







「…………」

「失礼します!茜さん!」

「ん?」

茜は窓から外を見ながら、
下っ端の持ち帰った情報に耳を傾ける。

「おい!さっさときやがれ!」

「はっはい!すいません!」

下っ端は、ユリナとネルのクラス
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40: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/05(火) 23:00

図書室、渦中の二人と同じ空間にいる奈那。


「ほーんと、騒がしいね、廊下」

「うん…」

奈那は、目の前の二人のことがわからなくなってきた。
騒ぎを前にしてどうして飄々としていられるのか、本当に人違いなのか?

「ねぇ、…あいつらが血眼になって探してるのってキミたちじゃないのか?」

奈那の問いに、ねるは首を傾げる。

「ね!なんだろうね!…なんで追われてるんだろ?
奈那ちゃん助けて!」

助けてというねるの顔に焦りは見られなかった。

(つくづくわからないよキミのことは…)

奈那は、ねるのちょっと先にいる友梨奈に視線を向ける。

黒目の揺れない友梨奈の表情から、
奈那は思考を読み取ることができない。

(まるで、人形だよ…あの子は)

なぜかチャイムは鳴るこの学校。
まともに授業が出来ないのならチャイムすらいらないはずなのに。

そして、終業のチャイムと共にリンチは収まる。
2年生の廊下から足音が遠くなる。
噎せ込む生徒達は仰向けに、なりながら
各々苦痛に顔を歪ませる。

「ヒラテユリナ…ナガハマネル…
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41: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/05(火) 23:28

「お前らはそれでいいのか!?」

マツリの言葉に4人は顔を見合わせる。

「だ…だけど…ふーちゃん…」

イッピツは、左右をみながら、言い出しずらそうに言葉を選ぶ。

「その二人、ケヤダンを…」

バレエがイッピツの代わりに伝える。

「だからどうしたッ!!!!」

マツリが言葉を遮る。

「ケヤダンがどーしたっ!お前らさっきからそればっかりじゃねぇか!
尾関!詩織!虹花!…菜々香!

うちらはなんだ!?

うちらは、なんのために、この場所で
こんな場所に毎日通ってんだ!

それは!つえーやつに!自分の力がどんなものか試したいからだろ!?

バレー部!ダンス部!テニス部!…全部憧れで終わらせていいのか!?

現にアタシらと同じ2年が!…ダンス部にもテニス部にもいるんだぞ!?
お前ら本当にそれでいいのかよ!?いつまでも部の下っ端たちに、
へこへこ頭下げるそんな人生を…後2年しつづけるのかよ!?

「アタシはイヤだ…ヤンキーが…牙を研がなくなったら…
それはお終いなんだよ!…」


マツリの言葉は、淘汰されてきた
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42: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/05(火) 23:52

そして、思い立ったらすぐに動く。
それは、齊藤冬優花として譲れないことだった。

マツリは、一階へと降りる。

一階は、チーム・サンレツのテリトリーではない。
勿論凄んでくる輩はいる。

「あぁ?なんだお前ら」

「悪いんだけどさ、そこ通してくれるか?」

マツリは、優しい口調で目の前の女に言う。

「はぁ?…」

目の前の女は「こいつ何言ってんだ?」と周りの輩に知らせるようにニヤッと笑い掛ける。

「あんまり、ムダな体力使いたくないんだよね。どいてくれないかな?」

一瞬マツリの目にグッと力が込められた。

「うっ………はっ?…なんだお前…」

少しビクリとした女にマツリは、

「アタシは、2年のマツリ…それでいい?」

「に、二年生…」

「手が出ないうちに、そこどきな?」

マツリは笑み一つ見せず、
目の前の輩に言い放った。

「すっ…すいませんでした…!」

マツリの圧力にヒヨった一年生。
その横をチーム・サンレツ一行が闊歩する。





「すごい圧力だねぇ…」

潮は教室越し
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43: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/06(水) 00:40

その全校放送は、
欅分校三本柱にも勿論届いていた。


「あっ茜さん!…」

「聴こえたよ…ふーん…面白そうじゃん…」

「どうしましょうか…」

「そーだなー…とりあえず…ここは一旦任せてみるか…
なんだっけ?チーム・オムレツだっけ?」

「サンレツ…かと…」

「馬鹿が!んなことはわかってんだよッ!」

「すっすいません!…」

理不尽に怒られる茜の下っ端。

「おめーらにもオムレツのリーダーみたいな頭があればなぁ!?」

茜は腕を組みながら目の前の生徒を威圧する。

「すっ…すいません!…」

「謝るしか脳がねぇのか?この能無しが…」

茜の恐怖政治に、おののく部員。

「ま、なんにせよ、今は任せろ…
こうなったら私が指示出すまでお前らは動くな」





体育館

「ふふっ…」

「何笑ってんの?りっちゃん」

「いや…面白いなぁって」

「みんながこれほどまで熱くなるヒラテユリナとナガハマネル
どんなもんか…気になってきたんだね」

「まぁそういうことになるのかな」 <省略されました> [全文を見る]

44: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/06(水) 02:24

「あー、あー、…欅分校の皆さん
2年、チーム・サンレツのマツリです…
今日は、皆さんに聞いて欲しいことがあり、放送しています

ここ最近、2年生は生きた心地がしていません…
なぜかと言うと、ダンス部、テニス部の部員さん達が、
二階、二年生の教室棟をめちゃめちゃにしていくからです…
今日もまた、多くの2年生が…その無差別な暴力によって傷を負うことになりました…
三年、幹部の皆さん…もうこれ以上…何も知らない二年生をいたぶるのはやめてください!
こいつらは、本当にあなた達のターゲットのことを知りません…
2年は確かに荒くれていますが、あなたがたの数の暴力には太刀打ちできない…
だから!…私達、チーム・サンレツは…
あなた達幹部方の代わりに、ヒラテユリナ・ナガハマネルを始末します。
だから…少しの間…2年の廊下をうろつくのはやめてください…
そして…

ナガハマネルッ!…ヒラテユリナッ!…

お前らのせいでたくさんの犠牲が出た!
明日からは、チーム・サンレツが…お前達の相手をする!
音を上げたほうが負けだ!…覚悟しておけ!………

それではこれにて
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45: 名前:仙人掌投稿日:2017/12/06(水) 03:12

翌日の校舎は、昨日の惨状の名残を残しつつも、
廊下は静けさを取り戻していた。
その静けさの要因は、クラスの大半が来ていなかったこと
だけでは済みそうになかった。

授業中も、いつもは紙飛行機だのトランプだのしてる連中がいない。
しかし友梨奈は動揺してるわけではなかった。
あるべき日常が戻っただけだと、そう捉えていた。


休み時間、いつもトコトコと付いてきていた女もいない。
何も考えずにボーッと廊下を歩いていると、突き当たった。
顔を上げるとそこは図書室だった。

友梨奈にとって、図書室はいい息抜きの場所だった。
しかしここにはもう、入れない。
友梨奈は、伸ばしかけた手を下げると、来た道を戻ろうとした。

「あんた、平手友梨奈か?」

道を戻る途中、一人の女に呼び止められた。
更衣室から出てきた女

面倒事に巻き込まれるのはゴメンだった。

「人違いです…」

友梨奈はその場を凌ごうとするが、

「ほーん…しらばっくれんだ?」

そう言って友梨奈の行き先を塞ぐ。

「そーいや、お前…2人組じゃなかったっけ?」
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46: 名前:仙人掌投稿日:2018/03/27(火) 02:52

友梨奈は一言、「めんどくさい」
そう呟き下を向いた。

鳥かごの如く友梨奈を囲い込むと、ズンダが先頭を切って飛び出す!

「平手ぇ!!!!」

友梨奈は左から突っ込んでくるズンダを半身にして躱す。
それを皮切りに、イッピツも駆け出してきた

「おらぁぁぁぁ!」

友梨奈は身を屈め飛んでくる拳をギリギリで躱し
正面を向き直ると栗色の髪をした女の水面蹴りを飛んで躱し、
ハイキックをしゃがむと、バレエの身体を掴み二人の方へ背中を押した。

ナーコは無言でスタタッと駆け出すと、友梨奈の背後に回り込む動きを見せる。
友梨奈の動きを止める為に、足に狙いを定めたナーコは友梨奈の右足を掴む動きを見せた

しかし友梨奈は手でナーコを払いのけると、ナーコを押し退けた。

「マツリ!」

華麗な身のこなしでダメージ一つ与えられずに避け切った先に、
拳を握り、ファイティングポーズを取るマツリがいた。

「まだだ!平手友梨奈」

「………」

対する友梨奈は戦意なく手をだらんと下ろし、ノーガードで対峙する。

「おらぁぁぁぁ!」

背後から
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47: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/22(日) 13:48
ズンダのパンチを膝を曲げて避けていると

「しゃあぁぁぁぁ!!!!」

と、怒号と共にイッピツとナーコが突っ込んできた。

低空のドロップキックの要領で友梨奈の脚を狩りにきた。

「つぅっ!…」

友梨奈はそれをモロにくらい
膝立ちのようになった。

そこに先程まで悶絶していたはずのバレエが
身体を一回転させて遠心力を活用した蹴り技を友梨奈の頭めがけて叩き込んだ。

「すげーよ3人とも!」

マツリが感嘆の声を上げたその蹴りは友梨奈の体を吹き飛ばした。

「やったか!?」

身体を起こさないままのイッピツが友梨奈の様子を見ながらそう呟いた。

バレエは手応えを感じたのか
友梨奈に向かってゆっくり歩き出す。

「終わりなの?平手さん」

バレエが吹き飛んだ友梨奈を覗き込もうとしたその時だった!

目を閉じていた友梨奈は目を開けて瞳に静かな闘志を覗かせるとバレエの脚を蟹挟みにして倒し

油断したバレエの片方の足首を思いっきり絞めあげた。

「うあぁぁぁぁぁッ!!!!」

アンクルロック!

一瞬のうちに足首が悲鳴
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48: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/22(日) 14:24

「虹花!!」

マツリが大きな声でズンダを呼ぶが、
ズンダは前のめりに倒れたまま動かない。

「平手ぇ!!!!!」

マツリの怒りが頂点に達する。

マツリのフットワークは友梨奈に負けず劣らずの軽さだった。

友梨奈に怒りをぶつけるマツリ
そんなマツリの拳を受け流しつつ
自らもパンチで応戦する友梨奈

綺麗な顔は少しだけ腫れてきた。
バレエの蹴りを喰らい首がズキズキする。

友梨奈は目の前の女に手一杯で、
迫り来る魔の手に気づけずにいた。

殴り合っているとマツリの顔は怒りというものとは違う表情を見せていた。

友梨奈はそのなにか企んでいるような顔に多少の苛立ちを覚える。

背中はガラ空きだった。

マツリの攻撃は長引けば長引くほど波に乗ってきた。
頭の中で祭りの打楽器が流れる。

右のストレートは友梨奈に避けられたが
胸ぐらを掴むと体を引き寄せて膝を浴びせる。
友梨奈はしっかりとガードをしてマツリの攻撃を受け流すが、
マツリの膝は友梨奈の腕もろとも壊してやろうかと言わんばかりに踊りを踊っていた。

「らぁッ!!
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49: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/22(日) 14:43

正直、友梨奈に余裕はなかった。
集団を相手にすることに慣れていないわけではない。

ゴロツキの集団に結束という言葉はないからだ。各々が自分のために獲物を狩るだけのために拳を振るう。

そんな奴らに、信念とか、義理なんてものは存在しないからだ。

だが、チーム・サンレツは違う。
一人一人が、仲間のために拳を振るう。

「自分が主役になる」

ではなく、仲間のためならサポート役にも回れる。

その固い結束力が、
いつもは冷静沈着な友梨奈を焦らせていた。

いや、そうではなくて、
友梨奈は自分のことを分かっていなかっただけなのかもしれない。

チーム・サンレツと交えたことで
友梨奈は新しい自分に会えた。

気がした。

「どうした平手友梨奈…こいよ!」

拳をだらんと下げ、猫背になっている友梨奈にマツリはそう言い放つ。

「………」

友梨奈は黙ったまま、目を閉じると
フゥーーーッと息をを吐いた。

また友梨奈の中で何かが変わったのを悟ったマツリは少したじろいだ。

が、

「ふーちゃんっ!!」

友梨奈の脚
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50: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/22(日) 15:00

そのはずだった!

しかし音と共に吹っ飛んだのは

「マッ…マツリッ!!!!!」

そう、マツリの攻撃は当たらなかった。

バコッ!

「ぐぁっ!」

ドカッ!!

「うぅっ…」

ボゴォッ!!!!

「うあぁっ!!!!」

一瞬にして三つの体が吹き飛んでいった。

「あなたは……」

友梨奈が視線を上げた先には

「えへへへ…遅くなってごめんね友梨奈ちゃん」

「長濱…さん…」

そう、その正体はねるだった。

「迷惑かけちゃったから…私…」

にこやかに笑うねると、
吹き飛んだ三体の体は

友梨奈の中でどうにも結びつかなかった。

「わっ…忘れてた…もう一人いたんだってこと…」

マツリは吹き飛んだ衝撃で肋骨を強打した。

「どっ…どこに隠れていやがった!長濱!」

そう言われるとねるは、あそこにいましたと言い図書室を指差した。

「ちくしょう…既にいやがったのか…
これじゃあ奇襲かけることも出来ねぇ…」

イッピツは肩を押さえながら立ち上がると
ねるをキッと睨みつけた。
<
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51: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/22(日) 15:44

「ぐぁっ…」

また一つ身体が床に転がった。

既に体力を消耗していたイッピツに
今のねるを越える力は残っていなかった。

「くっ…イッピツ!…」

ねるはパンパンと手を叩くと

「次はー、あなたかな?」

そう言ってナーコを見下ろした。

ナーコの目に魂は宿っていなかった。

「あなたじゃなさそうだね…そしたら…

あなた?」

ねるはマツリを視界に捉える。

マツリは苦悶の表情をしながらボロボロの身体を起こした。

ねるがマツリの方へ歩みを進めようとしたその時…

「長濱さん…」

ねるを制して、友梨奈がねるを見上げた。

「あの人は、私がケリをつけるから…いや、私がやらないといけない…」

「友梨奈ちゃん………分かった」

ねるはニコッと笑うと、
友梨奈とマツリから視線を外した。

そしてその目は後ろのナーコに向けられた。

「うわぁぁぁぁ」

ナーコは恐怖と焦りを帯びた捨て身の攻撃でねるの方へ駆け出した。

「あなた…喧嘩向いてないよ…私もだけどね」

ナーコの大振りのストレートはね
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52: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/23(月) 07:24

「ハァ…ハァ…行くぞ平手!」

マツリの頭の中で再びけたたましい太鼓の音色が奏でられる。

コンディションは最悪だ。
それでも、堕ちていった仲間のため
マツリは拳を振るった。

「オラァッ!オラァッ!!」

マツリのしっかりとした下半身から繰り出される強烈なワンツーを
友梨奈は手で捌き切ると
鳩尾へ、ボディブローを二、三発叩き込んだ。

「ぐぁっ…ゲホッ…」

マツリの身体がくの字に折れ曲がる。
一瞬息が止まる。

友梨奈はその場でクルリと回ると、
バレエの旋風脚のように遠心力を活かした蹴りを背中に叩き込む!

鈍い音と共に、マツリの身体が床へ投げ出された。

「ぐぅっ…」

しかしここ一番、スパートをかける場所で友梨奈は追撃しなかった。

その目は、今にも倒れそうなマツリをしっかりと捉えていた。

「はぁ…はぁ……まだだ…平手友梨奈…

あたしは…負けねぇ!!!!」

満身創痍の身体にムチを打つと
内側から絞り出した声とともに
強力な一撃を見舞う。

バキィッ!!!!

友梨奈はマツリの先程までの綺
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53: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/23(月) 09:44

「フゥ…フゥ…」

三年、テニス部の部室では
茜が今日も自分をいじめ抜いていた。

ストップウォッチの音と共にダンベルをガランと落とすと、スポーツドリンクを口に含む。

「しっ…失礼します!!」

そこに茜の後輩部員が姿を現わす。

「2年のチーム・サンレツが、やられました」

茜はその知らせを聞いてもなんのリアクションもしなかった。

「あっそう…元々期待なんてしてないけど」

不機嫌な茜の態度に、部員達はいつ火の粉が降りかかるかとビクビクしている。





「で?あたしらにそれを言ってどうすんの?」

時を同じくして体育館。
そう呟いたのは3年志田愛佳。

「いえ…やはりこういう情報は御二方にも伝えるべきかと思いまして…」

「別に興味ないよ。ダンス部に勝ってるコが、負けるとは思ってなかったしね」

同じく3年渡邉理佐。

二人は特に威圧することもなく、
スパイクを打ち続ける。

「用がそれだけなら帰ってくれるかな?練習の邪魔だから」

「は…はいっ!失礼しました!!」

二人に言われた通りに
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54: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/23(月) 23:40

「おい、聞いたか?チーム・サンレツのこと」

「聞いたもなにも、朝からずっとその話題じゃねぇか」

「結局、勝ったみたいだしな…ミユさんの言う通り、うちらじゃ敵わなさそうだぜ」

「特に…あいつ…見た目はチャラけた喧嘩のケの字も知らなさそうなヤツなのにな…」

「ナガハマか…あのタヌキヅラ…確かにあいつはヤベェ…急にバケモンが二体も来ちまうとはな…」

ダンス部には朝から重い空気が漂っていた。

「ミユさんもミユさんだぜ…あんな奴うちらじゃ倒せそうもないの分かってて見捨てるようなこと…」

「あーあー空気悪ぃ!おめーら何朝から辛気臭ェ話してんだよ」

ケヤダンの一人がそう言って下っ端達に吐き捨てた。

「う…うるせぇ!お前はあの時いなかっただろうが!!ミユさんから一目置かれてるからって調子こいてんじゃねぇぞ!」

「はいはい…そうやって負け犬ってのはよく吠えるんだよなぁ」

「んだとこの野郎!!」

女が立ち上がると、同じく自信満々な女も立ち上がる。

「あ?やんのか?」

しかしその女が立ち上がると、対峙していた女は挑発して
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55: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/24(火) 00:11

場所は変わり
ここはハチの巣の中でも異質の空間。
図書室のように誰も寄り付かない閉塞感のある場所だが、ここを好んでたむろしている女達がいた。

「なんや朝からうるさいハエが多すぎやなぁ」

「そやなぁ…チームハチミツだかなんだか知らんけど、昨日誰かに果たし状送ってたやんか」

「あーそれか…まぁウチは興味ないけどなぁ」

「なんやあんたは気にしてるもんやおもたけども…」

「冗談やめてや…ウチは三年にしか興味ないねん。二年なんてどうせ雑魚しかおらん」

「アンタもウチも二年やけどな…そうか…ウチは興味あるけどなぁ…おふたりさんどんな声で鳴いてくれるんやろうて…ヒヒッ」

「出た出た…アンタのそのモードほんま気味悪うてしゃあないわぁ…ナナミ」

「ミナミの方こそいつもそないな着物着て気味悪いて……ヒヒヒッ」

関西弁の女が二人。
ハチの巣の中でも異彩を放つ二人だが、
喧嘩になると思わぬことをしでかすトリッキーな連中だ。

「あぁ…鳴かせてみたいわぁ…」

「きしょいわぁ…」

ナナミと呼ばれた女はミナミにそう言われると不気味にニ
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56: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/24(火) 00:41

その日のチーム・サンレツは
どんよりとした空気に包まれていた。

朝から冷めた目で自分たちを見るヤンキー達が、ボソボソと自分たちの敗北の事を言っていることはわかっていた。

「なぁマツリ、ウチらこのままハチの巣から敵意を向けられたままなのかな」

「さぁな…まぁ敗者のあたしらに抵抗する手段はないからな」

「………お荷物…」

マツリ・イッピツ・ナーコは
これからのことについて悩んでいた。

女子トイレはどんよりとした空気に溢れていた。

「あーーーーくせーーーーー!」

「マツリ?」

「なんかクセーよ!掃除だ掃除!ピカピカにすんぞ!いつも世話になった場所だ!こーいうときはなんかしてるに限るんだよ!」

「ははっ…マツリらしいね」

イッピツとナーコは同調すると、掃除用具入れから道具を取り、トイレ掃除を始めた。

便器磨きに床磨き、ついでに鏡も磨いて窓も換気。キレイにこだわるのはやはりヤンキーでも変わらずにいた。

「ふぅー!スッキリした!」

「そうだね!やっぱり清潔感は大事だよ。心ったのは、書にも現れるからね」
<
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57: 名前:仙人掌投稿日:2019/12/24(火) 01:11
「いぇ〜い!!!!」

「い…いぇ〜い…」

「あれれ〜声が出てないぞ〜いぇ〜い!!」

「いぇーい!!!!」

歌っているのはねる。
そして付き合わされてるのはさっきの三人だ。

「いやおかしいだろ!そもそもなんでカラオケなんだよ!」

「知らねーよ!うちら負けたんだからなんも言えねーだろ!」

イッピツとマツリは小言を言っている。

「シャン…シャン…シャン…シャン…」

「シャンシャンじゃねーよ!パンダかっての!!!!」

この状況下で全く動じないナーコと
ノリノリで歌を歌うねるに二人は違う意味の恐怖を感じた。

「冬優花ちゃーん!尾関ちゃーん盛り上がってんのー!?」

「お、おー!」

苦笑いを浮かべる二人

「ナーコちゃんはー!?」

「シャカシャカシャカシャカ〜」

そしてマラカスを振って上機嫌な一人










「あー楽しかった!!久しぶりに友達と遊んだ感じ!」

「あぁっ??友達だぁ!?」

イッピツがねるにそう凄む。

「うん!昨日の敵は今日の友!
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