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  ドラム缶

01: 名前:白楽天投稿日:2013/09/10(火) 19:39
これから書いていきたいと思います
よろしくお願いします

02: 名前:白楽天投稿日:2013/09/10(火) 20:05


 ドラム缶に雨粒が当たる音がする。

 暑がりの男子生徒たちが開け放った窓から、雨が吹き込んでいた。
 吹き込まれた雨は教室の窓辺を濡らす。

 厚く垂れ込める雲は真っ黒で、午前中だというのに夜のようだ。蛍光灯の灯りがやたらとまぶしく感じる。

 今日も雨。九月の長雨は、かれこれ五日目になる。月火水木、そして今日。平日のすべてが雨だ。こうも続くと、うんざりしてしまう。

 おかげで、ドラム缶に当たる雨粒の音で、雨の激しさが分かるようになってきた。

 降り始めや、弱い雨の時は『コツン、コツン』。

 傘が必要なほどの時は『トントントントン』。

 強く、激しく降っている時は『ダンダンダンダン』。

 今日は『ダンダンダンダン』。まるでドラム缶を壊そうかというほど、強く降っている。

「大場。黒板を頼んだよ」

「はい」

 上の空で聞いていた授業が終わったようだ。私はやや間を開けて、返事をした。そして自分が宿直だということを今思い出す。

 先生の薄くなった後頭部が教室のドアから消えていくのを眺めてから、立ち上がった。
<
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03: 名前:名無しさん投稿日:2013/09/11(水) 12:29
下手

04: 名前:白楽天投稿日:2013/09/11(水) 17:45
  
  
 一日の約半分をドラム缶の音を聞いていたことになる。
 それは今もだ。

 授業が終わり、クラスメイトは皆帰った。教室にいるのは私一人。
 宿直と呼ばれる残務を終えると、まるでこの世界に私一人だけが取り残された気になる。
 
 
 窓から校庭を眺める。運動部がいない校庭。ふいに虚無感が私を襲った。

「おい、ドラム缶」

 背後から聞き慣れた声がした。ほんの数年前までは私よりも高かった声。
 今では私の父親よりも低くなったその声に反応をする。

「ドラム缶じゃない。美奈。私には美奈という両親が付けてくれた名前があるの」

 声が止んだ。
 代わりに足音が聞こえる。
 後ろを振り返ると、拓哉が自分の席を漁っていた。どうやら忘れ物をしたらしい。
 折れ曲がった教科書を強引に机から引っ張り出すと、カバンに詰め込んだ。

「一緒に帰ろうぜ」

 私は窓辺から離れると、自分の机に置いていたカバンを持って、拓哉の後を追った。

「雨ばっかだな」

 恨めしそうに空を見上げる拓哉。
 彼の目はビニール越しに見える真っ黒な雲を捉え
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05: 名前:白楽天投稿日:2013/09/11(水) 17:46
名無しさん

お手柔らかに頼みますね

06: 名前:白楽天投稿日:2013/09/11(水) 21:01
 
 
 街全体が暗い。街灯やお店からこぼれる灯りがあるというのに、どうしてこうも暗いのだろう。
 大きな雨粒は私たちに容赦なく降り注いでいる。まるで空が涙しているかのよう。
 大粒の涙は何に対してそんな悲しんでいるのか。私には皆目見当もつかなかった。

「来年は受験生だな。志望校は決まってる?」

 私は無言で首を振る。
 将来の夢はない。子供の頃はお菓子が好きだったので、ケーキ屋さんになりたかったが、今は体重を気にして、なりたいとも思わなくなっていた。

「だよな。将来なりたい職業は?」

 これもまた首を横に振る。
 友人たちからは「首がない」と揶揄されているが、短いだけで、確かに私の首は存在する。
 拓哉は「つまんない奴」と言って、話を続けようとしなかった。
 
「そういう拓哉は?」

 だから私は質問を返した。

「芸能人になる。『モトタク』で売れてやる」

 彼の本名が本村拓哉。周囲からは『モトタク』で呼ばれている。
 木村拓哉とは一字違いだが、容姿はかけ離れすぎている。それが原因で彼は小学生の頃イジメを受けていた。
 だか
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07: 名前:白楽天投稿日:2013/09/12(木) 20:44
  
  
 十七歳でプロのライセンスを取れることを、私は知っていた。
 アマチュアでやり続け、オリンピックにいくことも可能だ。
 拓哉はどうするのか。つい先月に誕生日を迎えた時には訊きそびれてしまったことを、今訊いてみる。

「それもいいな。だけど減量は嫌だな」

 拓哉の身長は百八十センチちょうど。
 体重は七十五キロで、アマチュアとしてはミドル級に位置する。
 
 
 日本の階級では、ミドル級までしかない。
 プロのミドル級は七十二.五七五キロまでで、あと三キロ近くまで落とさなければならない。
 何度もダイエットに挑戦したことのある私からしてみれば、途方もない数字だ。彼が渋るのも頷ける。

「でももし世界チャンピオンになったらかっこいいだろうな。女の子からキャーキャー言われてさ」

「ボクシングが好きな女の子はそんなにいないと思うけどな」

「好きじゃなくても、チャンピオンになれば違うだろ。だってそうなったら竹原慎二以来の快挙だぜ」

 にわかに色めき立ってきた拓哉。私は溜め息をする。
 竹原慎二以来の快挙といえども、それが女の子に通
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08: 名前:白楽天投稿日:2013/09/14(土) 18:14
  
  
 金魚の入った水槽のようなにおい。雨はまだまだ止む気配を見せないでいる。
 世界チャンピオンを夢見る拓哉は、まだ夢の世界から帰ってこない。
 すっかり『モトタク』で売れる芸能人を忘れてしまったようだ。

「そういやドラム缶。昨日の亀田の世界戦見た?」

 私の後ろで傘を差しながらボクシングのステップを刻む拓哉は、思い出したかのように尋ねてきた。
 私は「見ていない」とにべにもなく言う。
 何度ボクシングに興味がないと言えば分かるのだろうか。

「亀田の試合って消化不良が多いよな。こう、一発スカッとするKOが見たいぜ」

 彼にとって私がボクシングに興味があろうがなかろうが、関係のないことのようだ。
 結局は自分の言いたいことを言うだけ。そこに私の意見など求めてはいない。
 だからボクシングは好きになれないのだ。

「ドラム缶もボクシングを始めてみたらどうだ? シェイプアップしたい女たちがジムによく来るぜ」

「だから興味ないって。どうせやるなら他の競技にするわよ。あと、私はドラム缶じゃないの」

「ドラム缶はドラム缶だ」

 私
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09: 名前:白楽天投稿日:2013/09/15(日) 18:42
  
  
 誰もいない家。澱んだ空気は湿気を帯びている。
 換気をしない部屋はこうも澱んでしまうのに、湿気は平気で窓の隙間から入ってくるようだ。

 十階建てのマンション。私が四歳の時に購入したこの一室に住んで十三年になる。
 3LDKで、私の部屋もある。
 同級生も何人かこのマンションに住んでいるが、兄弟がいる人たちは皆一人部屋ではないらしい。一人っ子の私は彼らから何度も羨ましがられた。

 拓哉もそのうちの一人だ。弟と一緒の部屋だという。
 兄弟のいない私にとってしてみれば、帰って来た時に誰かがいることに憧れるのだが、彼らは口を揃えてそんなことはないという。
 どちらが本当なのか。
 人は自分にないものに憧れてしまう生き物なのだろう。
 
 
 
 雨が吹き込まない程度にリビングの窓を開ける。
 二階から見上げる空は遠く、大粒の涙をこぼし続けている。
 このまま私たちを溺れさせるつもりなのだろうか。

 朝の出掛けに見たニュースでは、洪水をした地域のことが報道されていた。
 避難所の様子、マンホールから逆流する汚水、氾濫した川。
 こうなっ
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10: 名前:白楽天投稿日:2013/09/16(月) 18:15
 
 
 ボクシングの試合があるとの連絡を受けたのは土曜日の夜。
 家族で夕食を囲んでいる時のことだった。
 メール画面には、翌日の午後からと表示されていた。
 私は拓哉の彼女ではない。同じマンションに住む、いうなれば幼馴染といったところだ。

 それでも足は会場に出向いていた。
 後楽園や国技館なんていう立派なところではない。
 近所の体育館。そこで試合が行われていた。

 会場内にはポツンポツンとしか観客はいない。それもほとんどが男性。
 女性といっても、選手の母親と思しき人ぐらい。
 汗臭いにおいが充満しており、来なければよかったと後悔をし始めた。
 そこに拓哉が現れた。

「おう」

「『おう』じゃないわよ。連絡が急すぎるの。試合があるって分かってたんならもっと早くよこしなさいよ」

 それでも私は来てしまった。
 用事がなかったというのもある。
 だが、なぜか足は会場に出向いていたのだ。

「木曜の亀田の試合見た?」

 まったく悪びれる様子もなく、サラリと話題を変える拓哉。
 おまけにその話は金曜日の下校途中で聞いた話だ
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11: 名前:白楽天投稿日:2013/09/16(月) 20:36
  
  
 ヘッドギア越しから殴られるのは、やはり痛いのだろうか。
 拓哉の相手選手を見て思う。
 利き手である右手のジャブ。それは相手との距離を測るため。
 左手のストレートはカウンターで決まる。

 尻餅を着く相手選手。拓哉の相手を見下ろす顔が見える。
 レフリーのカウントが始まる。
 私はそれを最後まで聞くことなく、会場の外に出た。
 
 
 
 外は雨こそ降っていないが、今にも降り出しそうだった。
 風が湿り気を帯びている。
 自動販売機を見つけたので、ちょっと悩み、一本飲み物を買った。
 プルタブを開け、それを飲んでいると雷が鳴った。

 空の咆哮のような雷。
 彼らは怒っているのだろうか。怒声にも聞こえる。
 やがて今度は涙に変わるだろう。
 怒りの後に襲ってくる悲しみに。

「ここにいたのか。どうだった俺の試合は」

 ジャージ姿に着替えた拓哉が小走りで私の近くに来た。
 雲に覆われた空を見て「また雨が降るのかよ」と愚痴りながら。
 私は再び空を見上げた。
 東の空は雷が鳴っていた。

「弱い相手だったぜ。ジャ
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12: 名前:ガブリュー投稿日:2013/09/16(月) 20:42
面白いです!

更新楽しみにしてるんで頑張ってください

応援してます。

13: 名前:白楽天投稿日:2013/09/17(火) 19:18
 
 
 ボクシングの歴史は長い。
 太古の時代より人は自分の力を見せつけたいのだろう。
 強いということは正義。弱ければ悪。
 そこに弱者の気持ちなど存在しない。

 ふとバベルの塔を思い出した。神を崇拝していた人々が、その道から外れてしまった物語。
 神の怒りをかった人々は言葉を失った。
 この空を見ていると、それが作り話ではないような気がした。雷が鳴るこの空は――。

「次の試合も見てくれよな」

 一人で実況をしていた拓哉だが、試合勘に関しては本物のようだ。
 私の返事を待たずして走り去ってしまう。
 帰りづらくなってしまった。
 なにが悲しくて人が殴られる様を見なくてはならないのか。
 それでも足は体育館へと向けられた。
 
 
 
 映画のスタッフロールを見るかのように、試合を見続けた。
 さすがの拓哉といえども勝ち進んでいく毎に殴られる回数も増えてきた。
 その分、拓哉も殴る。
 二階席から見る四角いリングは、まるでクルクルと回る人形劇のようであった。

 そんな人形劇にも一等賞があるようで、顔を腫らした拓哉が表彰をされ
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14: 名前:白楽天投稿日:2013/09/17(火) 19:19
ガブリューさん

ありがとうございます
短いお話になりますが、楽しんで読んでいただけたらと思います

15: 名前:名無しさん投稿日:2013/09/18(水) 01:15
S.5-11

16: 名前:白楽天投稿日:2013/09/18(水) 18:45
  
  
 人の出入りが無くなった体育館。
 拓哉はようやく出て来てくれた。
 顔には絆創膏。きっとワセリンも塗りたくられているのだろう。

「腹減った。飯でも行こうぜ」

 さんざん待った挙句、彼から言われたのはその一言。
 勝手に待っていたのだから致し方がないのだが、寂しさもある。
 拓哉はそんな私を置いて、スタスタと歩き去ってしまう。
 私はその後を追った。
 
 
 
 よほどお腹が空いていたのだろうか。
 ラーメン屋さんで拓哉は山の量を平らげた。
 行きつけのラーメン屋さん。豚骨スープで、脂がぎっしりと入っている。

「ドラム缶がまたドラム缶になっちまうな」

 帰り道、拓哉がぼそっと言った。
 デリカシーの欠片もない言葉。
 彼にそんな高度なことを求めても無駄だということを分かっておきながら、腹が立ってしまう。
それは私が彼に甘い言葉をかけてもらいたいという気持ちがあるせいか。

「私はもうドラム缶と呼ばれるほどの体型じゃありませんから」

 私にはくびれがある。身長こそ平均よりも低いが、奇形なほど低いわけではない
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17: 名前:白楽天投稿日:2013/09/18(水) 18:46
名無しさん

なんですか?

18: 名前:虎舞竜投稿日:2013/09/19(木) 18:22
これは抜けるのか?

早漏は治せる?

19: 名前:白楽天投稿日:2013/09/19(木) 19:36
  
  
 拓哉から夜空を見に行かないかと誘われたのは、二十二時を過ぎた頃だった。
 入浴を済ませたばかりの体。
 ドライヤーで髪を乾かしている時のことであった。

 一方的な電話。こちらか何かを言おうとしても遮られた。
 待ち合わせ場所を言うと、その電話は切れた。
 私は行こうか行かまいか悩んだ。
 だが、拓哉に文句を言ってやろうと決めたので、行くことに決めた。文句を言ってやるのだ。

 着替えを済ませ、そっと玄関から出ようとしたら、母に見つかってしまった。
 お決まりの言葉。
 私はどこに行こうとしているのだろうか。
 拓哉への文句を言ってやろうという気持ちがスーッと冷めていくのが分かる。

 要領を得ない私に母は勘付いたようで、「お父さんには黙っておくから」と言って、背中を押しだされてしまった。
 なぜ父に黙っておくのか。一人娘の深夜の外出だからだろうか。
 背中を半ば強引に押し出された私は、夜の闇に同化した。
 
 
 
 九月の外は肌寒い。もう少し厚着をしてくればよかったと後悔する。
 後悔ばかりの人生。
 それがなぜだかとて
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20: 名前:白楽天投稿日:2013/09/19(木) 19:37
虎舞竜さん

それは虎舞竜さん次第ですよ

21: 名前:白楽天投稿日:2013/09/20(金) 18:55
   
   
 しかし、今夜の私は違う。
 なぜか彼の先を無性に歩きたかった。
 私の先をスタスタと歩く拓哉を追い抜かす。
 歩幅の違い。私はもはや小走りになっている。
 
「おい。お前行き先知らないだろ」

 拓哉は追い抜かす。
 彼が大股で歩けば、それは造作もないこと。
 私はそれが悔しくて、更に速度を速める。
 それはもはや小走りではなく、走っていた。

「競争か。負けてたまるか」

 その行為を宣戦布告と受け取った拓哉は走り出した。
 私もその後を必死に追う。
 夜の街で追いかけっこか始まった。
 
 
 
 せっかく入浴を済ませたというのに、汗だくだ。
 乾かした髪が額に貼り付く。
 それでも拓哉の後を追う。
 歩幅の違い。男女の差。ボクシングをしている拓哉に到底追い越せるはずがない。

 それでも私は走った。
 拓哉の大きな背中を見失わないように。
 ここで追いつけなかったら、彼を失ってしまう。
 なぜかそんな気がした。

 手を伸ばす。
 グーッと伸びた手は、拓哉の大きな背中には届かなかった。

22: 名前:白楽天投稿日:2013/09/21(土) 13:36
 
 
 雷が鳴っている。
 夜空の逆鱗は、周囲を昼間のように明るくさせる。
 拓哉の後を追ってたどり着いた場所。
 雷がよく見える丘だった。

 “普通”の恋人たちが行くような場所ではない。
 甘い余韻に浸れる場所でもない。
 とてもじゃないが、デートスポットとはいえないこの場所に私と拓哉はいる。

「おお! すげーな。こんなにも雷が鳴るもんなんだな」

 まるで小さい子供のようにはしゃぐ拓哉。
 芝生の上にゴロンと横たわりながら感嘆している。
 私は洋服が汚れるのが嫌でずっと立っている。
 こうなることを分かっていたのだから、ビニールシートぐらいは用意してほしいと願うのは、酷なことなのか。

「ドラム缶も見ろよ」

「見てます」

「すげーよな」

 確かに彼の言うとおり、初めて見る光景だ。
 大地が裂けるかのような轟音の後に、カメラのフラッシュとは比較にならないほどの光が発せられる。
 それはまるで映画やゲームのよう。
 世界の終わりを告げているのか。

 もしもこの世界が今日終わりを告げたとしたのならば、私は拓哉と死ぬこ
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23: 名前:白楽天投稿日:2013/09/23(月) 00:34
  
  
 小さい子供がアニメ番組に夢中になっているかのように、目を輝かせている拓哉。
 最初こそ私も見慣れない光景に心が躍ったが、それも飽きてきてしまった。
 それどころか、轟音に恐怖さえ感じる。

「ねえ、もう帰らない?」

「もうちょっといようぜ。次はいつ見られるか分かったもんじゃないからな」

 いつだってそうだ。私の願いは全部切り裂かれてきた。
 自由人な彼に、枠をはめることも、リードをつけることも叶わない。
 私はただ着いて行くだけ。

「なあ、ドラム缶」

「なに?」

「……なんでもない」

 溜め息を吐く拓哉。
 いつもは言いたいことをズバズバと言う彼が珍しい。
 そのまま黙りこくってしまった拓哉を私はそっと見守ることしか出来なかった。
 
 
 
「帰るか」

 鳴り止まぬ轟音を背に、私たちは丘を下りて行く。
 何か言いたそうな顔をしている拓哉だが、私は追及するのを躊躇った。
 行きとは違う重たい足取り。

「広島の男は不器用じゃけえの」

 ボソッと言った一言は、相変わらず意味が分からないものだ
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24: 名前:白楽天投稿日:2013/09/24(火) 19:20
  
  
 それから一週間が経った。
 降り続いた雨から、快晴の日へと空は変わっている。
 流れゆく雲はまだ夏の名残を残しているかのようだ。

 拓哉と私の関係は相も変わらず。
 ボクシング漬けの拓哉はどうやら本気でプロになるらしい。
 近々プロテストを受けるとのこと。
 先に行われた大会で優勝したせいだろう。

 物事というのは自分の思い通りに進んではくれないものだ。
 もちろん自分が勇気を持てば変わるのかもしれないが、勇気を持たない人間はそのまま。
 水面に浮かぶ枯れ葉のように、流れに身を任せることしか出来ない。「会長が『近々プロテストを受けさせるから準備しとけ』って言ってたんだ」

 帰り道、シャドーをしながら拓哉は何回も聞いたことを言いだした。
 頭を殴られ過ぎて壊れてしまっているのだろうか。
 ボケが始まったお年寄りに接するかのように、「それはもう聞いた」と言う。

「俺もいよいよプロか。減量はキツいけど、その分の見返りはキッチリもらうぜ」

 誰にもらうのか。
 拓哉は本当に掴めない人間だ。
 狸の皮算用をしている拓哉を憐れむ
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25: 名前:白楽天投稿日:2013/09/24(火) 19:21
  
  
 それから一週間が経った。
 降り続いた雨から、快晴の日へと空は変わっている。
 流れゆく雲はまだ夏の名残を残しているかのようだ。

 拓哉と私の関係は相も変わらず。
 ボクシング漬けの拓哉はどうやら本気でプロになるらしい。
 近々プロテストを受けるとのこと。
 先に行われた大会で優勝したせいだろう。

 物事というのは自分の思い通りに進んではくれないものだ。
 もちろん自分が勇気を持てば変わるのかもしれないが、勇気を持たない人間はそのまま。
 水面に浮かぶ枯れ葉のように、流れに身を任せることしか出来ない。
   
  
   
「会長が『近々プロテストを受けさせるから準備しとけ』って言ってたんだ」

 帰り道、シャドーをしながら拓哉は何回も聞いたことを言いだした。
 頭を殴られ過ぎて壊れてしまっているのだろうか。
 ボケが始まったお年寄りに接するかのように、「それはもう聞いた」と言う。

「俺もいよいよプロか。減量はキツいけど、その分の見返りはキッチリもらうぜ」

 誰にもらうのか。
 拓哉は本当に掴めない人間だ。
 
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26: 名前:白楽天投稿日:2013/09/24(火) 19:22
>>24はミスです

正しくは>>25になります

27: 名前:白楽天投稿日:2013/09/25(水) 19:09
  
   
 ドラム缶に雨粒が当たる音がする。
  
  
 久しぶりに降った雨。
 肌寒さを覚え、カーディガンの裾を伸ばし、手を覆う。
 私の小さな手はすっぽりと毛糸に包まれた。
 拓哉はよく私の手をハンバーグのようだと馬鹿にした。小さくて丸いハンバーグのようだと。

 拓哉は世界チャンピオンになれなかった。
 大した実力を持ち合わせていないからだ。
 乗用車ごとき耐えられなくては、世界チャンピオンになどなれないのだ。

 道路を横断しようとした子供をかばって即死。
 どこのヒーローを気取っているのだろうか。
 ヒーローを気取りたければ生きていなければいけないはずだ。
 だけど拓哉は死んだ。

 あれだけ鍛えられた背中をしていたのだから、耐えられたはずなのに。
 だからボクシングは嫌いだ。
 人を殴るだけの野蛮なもの。
 そのくせ大事な人を守ってくれない。

 変わってしまった拓哉。
 昔はあんな奴ではなかった。
 人の話をちゃんと聞く人間だった。
 なまじ、『力』を手にしてしまうと、人は変わってしまう生き物なのだ。

 経
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28: 名前:白楽天投稿日:2013/09/25(水) 19:10
終了です

ありがとうございました

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